やる夫で学ぶ「法学者の統治論」
651
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2024/08/31(Sat) 00:26:28 ID:1e92ac9d
/ ̄ ̄\
/ _,ノ `⌒
| ( ●) (●)
.| (___人__) こうして達成された革命は、シャリアーティにとって自ら達成されたがゆえに民主主義だとされる
| ノ
.| | ……と、ここでシャリアーティの革命論は終わる
人 丿
/⌒ \ __ _ / 彼にとって、具体的な政府の構造を提示することは目的ではなかったらしい
/ \
./ 人 ./ ヽ
〈 < / \ \
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
⑥革命成功
=革命に成功した政府は、社会の全ての規範を変革するものとなる
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
652
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2024/08/31(Sat) 00:29:29 ID:1e92ac9d
-―─- 、
/ \
′ ⌒ ⌒ ,
i ( ―) (― ) i
| (__人__) u. | ホメイニーもそうだけど、革命に至る論理を正当化することに焦点が合って
、 ノ
⊂⌒ヽ > <_/⌒つ その後の、具体的な政府の構造を主張しないのはなんでなんだお?
\ 丶′ 7
\ ノ ト、_/
. ′ |
. i |
乂 イ
| /ー―一 、 |
し′ 、_j
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( 一)(●)
| (__人__) そりゃあ、お前革命レベルに興味があるわけだし
| `⌒´ノ
| ,.<))/´二⊃ その上、曖昧にしておくことで、色々な反政府勢力と結びつきやすいからだな
ヽ / / '‐、ニ⊃
ヽ、l ´ヽ〉 下手に提示すると、そこで妥協できない奴が出てくるだろうしな
,-/ __人〉
/ ./. / \ なるほど……>
| / / i \
|" / | > )
ヽ/ とヽ /
| そ ノ
.
653
名前:普通のやる夫さん[sage] 投稿日:2024/08/31(Sat) 00:32:55 ID:230a63c7
結局、理論が具体的な政治システムを生み出すところまでいかないから
暴徒とテロリストを生み出すことにしかならんのでは
654
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2024/08/31(Sat) 00:34:33 ID:1e92ac9d
___
/ \
/ ⌒ ⌒\
. / ( ●) ( ●)\
| u. ⌒(__人__)⌒ | まあ、大体わかったよ
. \ ` ⌒´ /
/⌒ ヽ でも、やらない夫気になる点があるお
. | ヽ__ _ ',
:、_ ) ( ̄ _丿 伝統的なウラマーや女性については何か言っていないのかな?
| /  ̄`i / ̄ `i
| | , |
∧ | |__/ /
. `ーヽ _ | | _/
. (__) 、__)
/ ̄ ̄ \
__ノ `⌒ \
(●).(● ) |
(__人___) | ああ、それについても ありす教授のメモがあるよ
, =二ニニヽ、 |
/ 二 ヽ、`,┘ ト、 まずウラマーの方だが、これは分類がされているな
/ -、 }、j┘ イ ⌒ヽ
/ /{_/_ ,/ }
/ ノ∧ ィ }
| | / i | |
.
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
シャリーアティにおけるウラマーへの考え①
=シャリーアティはウラマーを二種類のウラマーに分ける
第一に、アリーのシーア 第二にサファヴィー朝のシーアである。
前者を運動し変化し続けるイスラーム、後者を体制化し停滞するイスラームとして
特権化した宗教指導者層の体制化と硬直化を批判対象とした
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
655
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2024/08/31(Sat) 00:41:53 ID:1e92ac9d
./ ̄ ̄\
/ ヽ、_ .\
. ( (● ) . |
. (人__) | そして、駄目な体制化と硬直化したウラマーの理由を述べる
r‐-、 . |
(三)) . | ここでも、さっきの自己変革論だな
> ノ /
/ / ヽ、 . / 人々を導くことができない変革させられないから駄目だという論理だ
/ / ⌒ヾ .〈
(___ゝ、 \/. )
. |\ ,.1
. | \_/...|
.
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
シャリーアティにおけるウラマーへの考え②
=なぜ体制化と硬直化したウラマーが批判されるか
このようなウラマーは、知を独占し、二元論的 躍動感なく他者の意見を否定し他者に服従を要求する自己変革をしない
ウラマーとは、自由な言論と議論や思想のぶつかり合いを探求する存在である
当時のイランのウラマーはサファヴィー朝のシーアだから×
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
656
名前:普通のやる夫さん[sage] 投稿日:2024/08/31(Sat) 00:43:49 ID:034bf7d1
ウラマーの硬直はたびたび問題になる
657
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2024/08/31(Sat) 00:50:13 ID:1e92ac9d
. / ̄ ̄\
/ノ ヽ、_ \
. (●)(● ) | そして、もう1つやる夫が言ってくれた 女性の部分だ
. (人__) |
|⌒´ | この点は、言及しなかったホメイニーと違う差別点になるな
. | /
. ヽ / 彼は自分の議論を、女性の権利にも延長して述べているんだ
. ヽ. /
,-‐)__, /⌒l
. /;─ー〉》 /l
. (_ンー‐-,r'´ . |
| |
.
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
シャリーアティにおける女性への考え①
=シャリーアティはこれまでのイスラームの伝統と西洋的自由主義が誤って女性の権利を阻害していると考える。
伝統的なイスラームにおいては、女性の社会的・政治的権利を阻害し
西洋的自由主義においては、家族的部分から解放されているが、社会的権利が疎外されている。
ゆえに、現状の女性が疎外されていること状況自体が、タウヒード的でない。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
658
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2024/08/31(Sat) 00:57:36 ID:1e92ac9d
/ ̄ ̄\
/ _ノ ヽ、_ \
.| ( ●)(● ) |
.| (__人__) │ 彼は女性の解放の本丸とは、政治活動も含めた社会的活動であり
| `⌒ ´ |
.| | 自由な職選びや権利の行使をできる状況にすべきと……
r、 r、ヽ /
ヽヾ 三 |:l1.ヽ / それを様々イスラームの歴史から正当化することに焦点を置いているんだ
\>ヽ |` } > <
ヘ lノ `'ソ ヽ なるほど……>
/´ /,1 | |
\ ノ .| | |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
シャリーアティにおける女性への考え②
=タウヒード的ウンマを達成するには、女性の開放が必要である
この解放とは伝統的な家事の従事をなくし、社会的活動へ導く必要性がある
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
659
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2024/08/31(Sat) 01:01:14 ID:1e92ac9d
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
④現代イランとシャリアーティ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
/)
. __ rフ /m
. / ~\ / ノ― |
. / ノ (●)\ | | と、ここまで話した内容が、シャリアーティの思想らしい
| (.●) ⌒)\ | /
| (__ノ ̄ \ / ` / やる夫はどう思った?
. \ | / /
. \ / / /
\ ノ/ /
/⌒ヽ /
/ rー'ゝ /
/,ノヾ ,> イ
// ヽ〆 |
____
/_ノ ヽ、_\
/( ─) (─)\ 革命に至る論理を正当化していること、その背景にある西洋への憎しみ?的なものは
/::::::⌒/)/) ⌒::::: \
| // / | ホメイニーと共通していると思ったかな
\ | / 二二) /
/ i r‐一' \ ただ、ホメイニーと違うのは、民衆という部分にかなり力点があるかなって
.
660
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2024/08/31(Sat) 01:07:42 ID:1e92ac9d
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ●)) うん、それは俺も思った 結構民衆を大事にしているような
| (__ノ_) ____
. | `⌒ノ / \ 平等という単語にとことんコミットして、民衆に革命を訴える
| } ⌒ ⌒ .\
ヽ } (●) (●) \ これを行ったからこそ、当時のイランで人気だなろうね>
ヽ ノ |(__人_) |
> < ∩/) \ヽ_ノ /
/. ヽ / く / ー‐ ヽ
| ヽ \/ _ ノ / `
| ヽ /
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
シャリアーティ思想の独自性
①民衆とインテリの繋がりの重視(民衆の覚醒なくして革命なし)
②伝統的なウラマーとは違う、ロウシャンフェクルの概念
③社会主義+イスラームによる平等性のロジック
④革命的自己形成論の概念
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
661
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2024/08/31(Sat) 01:16:43 ID:1e92ac9d
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ―)(●)
. | (__人__). ありす教授のメモによれば、特に重要なのは革命的自己形成らしい
| ` ⌒´ノ ))
. | } ∩,, どうしてだお?>
. ヽ } ( <彡}
ヽ ノ .| ゝi´ なんでもイラン・イスラーム革命直前のイランを訪れたフーコーはこんなことをいったらしい
/ イ`ー―┘ .}
| r―― - ´ ※20世紀のフランスの哲学者
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
フーコーのイランに関する発言の要旨
アメリカへの拒否感はシャー(皇帝)否定の一要素であるが、民衆はもっと根源的なところで拒否を共有していた
イランのシステムを変革するには、為政者と取り巻きを変えなければならない。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
それには自らの経験において根源的な変化がなければ、現実の革命はない。
そう考える人にとっての革命において、イスラームが果たした役割とは規範や教えの魅力ではなく、
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
むしろ自分たちの生き方に対して、自らの主体性を根源的に変えるための保証のような役割を果たしている。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
662
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2024/08/31(Sat) 01:20:23 ID:1e92ac9d
∩_
〈〈〈 ヽ
____. 〈⊃ }
/ \ | |
/ ヽ、 _ノ \ ! ! ん?これ……もしかして、シャリアーティの話のパクリじゃry
/ (●) (●) \| l
| U (__人__) .| /
\ |i||||||i| //
/ __` ー' /
(___) /
.r-、 / ̄ ̄\
/て ) / _ノ \
( _ノ フ. | ( ●)(●)
ゝ、 〈 | u. (__人__) 一応、フーコーはシャリアーティには言及していない。いや確証は持てないけど
/ ハ ヽ. | ` ⌒´ノ
/〃 ヘ \ . | } ただ、一応イランの民衆の姿をつぶさに見た当時の外国人の目からも
i ! \ ` ーヽ }
丶丶 _ > ヽ ノ、 民衆が、イスラームを活用して、自己変革を成し遂げていると見えたらしい。
ゝ'´- 、_ y-、 \
〈  ̄ う /、 ヽ
`ー― ¬、__ノ | > / ちなみに、これは1978年の話だ。
| r'^ヽ'´ _/
| `く__ノ´
.
663
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2024/08/31(Sat) 01:27:15 ID:1e92ac9d
__
/ノ ヽ\
/ (─)(─)\
| u (__人__) | シャリアーティ自身は1977年に死亡し、ホメイニーが決定的な場面で登板することになる
| `⌒ ´ |
| | だけど、それを支える民衆は、シャリアーティの活動によって革命を準備した
| |
ヽ / そういう意味で重要……ってことなんだろうな
ヽ /
☆ / \
ボキボキッ \/ ト ィ ヽ
( ( 〈 | | 〉
____
/ \
/ _ノ ヽ__ \
/ ( ●) ( ●) \ そういう意味なら確かにそうかも
| u (__人__) |
\ `⌒ ´ / そして、そのシャリアーティの思想の影響を受けた人が 50代以上
/ u /´ __) \
| 、___/ /´ |/ 国の中枢を握っている世代なら、そうかも
|\________/ |
} |
.
664
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2024/08/31(Sat) 01:33:33 ID:1e92ac9d
. '´ ̄ ̄\
/ \
{ -― \
ヽ ,/ (●) ヽ そう考えると、今のイランにおける女性のヒジャーブ問題などもおもしろいな
ヽ(●) ⌒) トミ、
\(__厂´ } \ メモによれば、こんな言葉を残しているらしい
\ ⊂ヽ∩ }
|>-(,_,_/__/}
| ∧ j
ゝ--へ、___ハ
\_,ヘ \
{_/^`ー'
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
シャリアーティの宗教論 著作「ムハンマドの顔」p54より
もし、政府の宗教と政治のバランスが逸脱――極端な世俗主義、精神的な宗教主義に向かえば
必ず、元に戻ろうとする力が働くする、それこそがイデオロギーとしての宗教、革命的イスラームである。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
665
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2024/08/31(Sat) 01:38:15 ID:1e92ac9d
_____
. / ― \
./ノ (● ) \ これって自分が死んでも、イランというのは常にバランスを取るために
| (● ) ⌒) |
| (__ノ ̄ / 革命をするっていうメカニズムがあるってコト…!?
| /
\_ _ノ\
/´ |
| / |
/ ̄ ̄\
/ _,.ノ ヽ、_
| ( ○) (○)
| U (___人__) なかなか、恐ろしい預言だな。1971年に書かれた著作の記述らしいが
.| __ノ__
| _/ ___\ヽ_ 世俗的な体制だけでなく、過度な宗教体制にも警鐘を鳴らしているな。
、 '-/____ヽ |
ノ 、 ._'-〈 、ヽ | シャリアーティの考える革命論は、時代を超えた普遍性を持つのも特徴かもな。
,´ ヽノ} |
/ { / どのような体制にも鉄槌を加えることができる論理を持っているという点でな
./ / / { ってわけで長くなったが、まとめにはいろうか。
.
666
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2024/08/31(Sat) 01:47:53 ID:1e92ac9d
まとめ
①アリー・シャリーアティとは20世紀のイランを代表する社会学者・思想家
イスラーム、反帝国、西洋を上手く接合して、民衆中心の革命理論を打ち立てた。
②シャリーアティは、イランに生まれイランの学生時代、フランス留学時代を通じて、政治活動にコミット
西洋的な思想の影響も受けつつ活動したが、1977年に死亡。
③シャリーアティは、西洋自由主義や帝国主義の問題点から現在の状況を説明し
平等性を強調するためにイスラームの本旨に帰れと主張。
④そのために、教育を受けた近代的なイスラーム知識人「ロウシャンフェクル」の役割に期待しつつ
民衆の自己覚醒「革命的自己形成」こそが革命の第一歩とした。
⑤シャリーアティは死亡したものの、その思想的影響力は消えたとは言い切れない。
むしろ、現行のイラン・イスラーム共和国体制への批判理論ともなりうる存在。
⑥ホメイニーの法学者の統治論は、如何にアッラーの代理としての法学者による統治とそれに至る革命論を正当化したが
シャリーアティは、民衆を重要視し、かれらを革命に動員するための理論を作り上げたという違いがある。
/ ̄ ̄\
_ノ ヽ、 \
____ (●)(● ) l
. / \. (__人_) | というわけで、こんな感じだな
. / ― ―\. ヽ⌒ ´ l
/ (●) (●) \ { / かなり議論自体は混雑しているが、要旨をまとめると
. | (__人__) | ヽ /
\. ` ⌒´ /. / `ヽ 民衆を覚醒させる!それが革命の基礎段階だ!ってことだな
> <. /. <⌒ <)))\ l
/ /(((> ⌒> l ヽ_ヽ、___ ,イ
l. ___/_ノ. , ─l. |- 、 正直ホメイニーの議論よりは好感が持てるんだな
. l. ー‐⌒ヽ⌒ヽ l /⌒ ̄ ̄ ̄ l
ヽ、. |_ノ `/ , ─―──´
 ̄ ̄ ̄`ー ′ `ー ′
.
667
名前:普通のやる夫さん[sage] 投稿日:2024/08/31(Sat) 01:48:41 ID:034bf7d1
なるほど・・・
668
名前:普通のやる夫さん[sage] 投稿日:2024/08/31(Sat) 01:49:53 ID:230a63c7
常に市民革命の余地を維持することで権力の硬直化を防ぐという感じかな
669
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2024/08/31(Sat) 01:56:51 ID:1e92ac9d
/ ̄ ̄\
/ ─ ─\
| ( ●)(●) ___ シャリーアティを理解するには、シーア派のイスラーム主義、リベラリズム、現象学
. | U (__人__) / \
| |r┬-| /─ ─ .\ 実存主義、マルクス主義、ポスト・モダニズム、ポスト・コロニアルなど
. | `ー'´} \ / (●) (●) \
. ヽ } \ ...| (__人__) | 結構いろいろな議論を考えないといけないことがある。
ヽ ノ \ \ ` ⌒´ _/
/ く. \ \ ノ \ それに、彼の著作が多すぎて、全て把握するのが難しいね>
| \ \ (⌒二 |
| |ヽ、二⌒)、 \ | | まあ、とにかく何点から参考文献みて、さらって見るぐらいで良いと思うお>
.
670
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2024/08/31(Sat) 02:05:49 ID:1e92ac9d
Dr. Ali Shariati ttps://www.shariati.com/kotob.html
シャリーアティーに関するHP。彼の一部の著作や講演などが無料で しかも英語で閲覧可能というありがたみ。
The Official WebSite of Dr Ali Shariati ttp://drshariati.org/
シャリーアティーの公式文化財団。ペルシャ語だけど、彼の著作のみならず、様々なデータがアーカイブ化。
このサイトを使わずして、シャリーアティ研究を名乗ってはいけない。
シャリーアティー,アリー.1997.イスラーム再構築の思想―新たな社会へのまなざし.桜井秀子訳, 大村書店.
シャリーアティーの講義集。黒田壽郎による解説もついており、シャリアーティ思想に触れるならまず1冊目として。
/ ̄ ̄\
/ _,ノ `⌒
| ( ●) (●)
.| (___人__) さて、まずはシャリーアティーとはなんぞやと調べるためには
| ノ
.| | 上記2サイトを使うのが良いだろう。ただ、現状翻訳サイトにも限界があって何書いているのかわからないこともある
人 丿
/⌒ \ __ _ / そのために、日本語でというなら 桜井秀子訳の奴が良いだろう。
/ \
./ 人 ./ ヽ
〈 < / \ \
.
671
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2024/08/31(Sat) 02:08:11 ID:1e92ac9d
黒田壽郎.1980.『イスラームの心』中公新書.
――.1980.「イラン革命の哲学(一):アリー・シャリーアティーのイスラーム再解釈の試み」『現代思想』8巻 2号: 176-187.
日本で始めてのシャリアーティ思想の紹介
桜井秀子.2012.「イスラーム的な自己形成──アリー・シャリーアティーのナースの思想──」.『中央大学政策文化総合研究所年報』 第16号: 69-84.
民衆という点からシャリーアティー思想を踏まえて論考
永井晋.2016.「世界哲学構築における<イラン>という視座(パースペクティヴ)」.『国際哲学研究』5号 23-27.
講演録。シャリーアティー思想にも一部言及
羽山賢一.1985.「アリー・シャリーアティーにおける「ロウシャンフェクル」 : (イスラーム知識人)の理念とイラン・イスラーム革命」.『国際大学中東研究所紀要』 1号: 49-82.
シャリーアティー思想とイラン革命にに関してもっともまとまった論考
村山木乃実.2018.「アリー・シャリーアティー(1933-1977)の『沙漠』Kavir の分析:「書くこと」の意味合いに着目して」『言語・地域文化研究』第24号:35-52.
シャリーアティーの文学的側面に着目
____
/⌒ ⌒\ ホジホジ
.. /( ●) (●)\
/::::::⌒(__人__)⌒:::::\ そこら辺の基礎を抑えた上で、じゃあシャリーアティー思想ってなんだろ?
| mj |ー'´ |
\ 〈__ノ / と気になったら、このあたりから 日本語でも色々研究がされているのがよくわかると思うお
.. ノ ノ
.
672
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2024/08/31(Sat) 02:11:23 ID:1e92ac9d
Abdollah Vakily. “Ali Shariati and the mystical tradition of Islam”. available at:
ttp://digitool.library.mcgill.ca/R/-?func=dbin-jump-full&object_id=60680&silo_library=GEN01
スーフィズムとの関連からの研究
Ali Rahnema. An Islamic Utopian: A Political Biography of Ali Shari'ati. 3rd ed, New York : I.B. Tauris, 2014.
個人史から見た研究
Mehrazad Boroujerdi, Iranian Intellectuals and the West: the Tormented Triumph of Nativism, New York ; U niv Press,1996.
宗教的知識人としてのシャリーアティー研究
Hamid Enayat, Modern Islamic Political Thought, London : I.B. Tauris, 1982.
近代政治哲学としてのシャリーアティー
Hamid Alger, Roots of the Islamic Revolution in Iran, London : Open Press, 1983.
イスラーム革命のルーツとしてのシャリーアティー
Ervand Abrahamian.1982.Iran Between Two Revolutions, Princeton : Princeton UNIV PUPRESSUNIV P.
シャリーアティーとシーア派思想について
Shahrough Akhavi.1983. “Shariati's Social Thought” in Nikki R Keddie (ed), Religion and Politics in Iran: Shi'ism fromQuietism to Revolution, New Haven : Yale Univ Press,125?44.
イラン革命におけるシャリーアティーについて
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ●)(●)
.| (__人__)_ 日本語じゃ飽き足らないって人はこのあたりの英語文献が良いんじゃねえかな
| `⌒´. ̄
.| ノ 40年以上前の思想家だから、現状流行りのテーマとは言えなくて、1980年代の資料が中心的だけどな
ヽ .,ノ )/´二⊃
> /"/ '‐、ニ⊃ キンッ ただ、当時の西洋の人々が、イランイスラーム革命をどう考えていたかっていう傍証にはなるかも
./⌒ヽ l ´ヽ〉〆ヽ
( ヽ/ __人〉ヾ_ノ,ゞ
.\ / / { /
.
673
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2024/08/31(Sat) 02:16:02 ID:1e92ac9d
/ ̄ ̄\
/ _ノ ヽ、_ \ . ____
.. | ( ●)(● ) | / \ というわけで、今回はここまでだな
. . | (__人__) │ / ─ ─ .\
| `⌒ ´ | / (●) (●) \ 4話から続いてきたイランの話は今回で終わりで
. | | | (__人__) .|
. ヽ / \ ` ⌒´ / 次回からはイラク編だ
ヽ / > く.
/ く.[ニニニニニニニニニニニニ`.ニニ´ニニ]ゝ ヽ
| ヽ、二/ 〈〉 〈〉 ヽ__,ノ l ホメイニーに並ぶ理論家として有名な バーキル・サドルの「法学者の政治指導論」だね>
. | / 〈〉 ヽ |
| / 〈〉 〈〉 〈〉 ヽ / 今回のシャリアーティーともホメイニーとも違う議論を楽しめること期待しているよ!>
ヽ、_ヾ-‐‐--‐‐--‐‐--‐‐--‐‐--‐‐--‐ゞ___/
.
674
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2024/08/31(Sat) 02:17:59 ID:1e92ac9d
というわけで、今回の投下はここまでになります。
長々と準備もせず投下して申し訳ないです。ありがとうございました。
質問等はいつでも受け付けます。次の投下は9月以内にできればなと思います。
あと、申し訳ないですが、シャリーアティーの表記ブレがひどいですね……
正しくは「シャリーアティー」ですので、皆様の脳内で変換してもらえると助かります。
675
名前:普通のやる夫さん[sage] 投稿日:2024/08/31(Sat) 02:25:55 ID:230a63c7
乙
ドタバタのフランス留学で得た市民革命成分がにじみ出てるように感じた
676
名前:普通のやる夫さん[sage] 投稿日:2024/08/31(Sat) 02:37:25 ID:8cbb90c3
乙
677
名前:普通のやる夫さん[sage] 投稿日:2024/08/31(Sat) 06:51:18 ID:47b64d76
乙
こんな人もいたのか1つ賢くなれたわ
678
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2024/08/31(Sat) 14:26:12 ID:73ce03a5
>>675
本編でも少し触れましたが、彼は批判的に西洋の学問を吸収してきたわけです。
具体的には以下の3つの学問領域が革命思想に影響を与えたと言えるでしょうか。
第一に、当時のフランスの社会学です。実証主義が特に影響を与えたようですが、彼はこれを批判します。
なぜならば、当時の社会学は西洋が西洋を見るための学問であり、第三世界を見るための学問ではないからだと。
さらに、彼は社会学でありがちな、観察者・分析者の中立というのも批判的です。
社会学のような科学は、社会にコミットメントして初めて意味があるのであり、傍観者ではなんの意味もない学問だと切り捨てるわけです。
それゆえに、学者=知識人というものは、中立を捨てて社会参画すべきという方向になるわけです。
第二に、より影響を強く受けたのは、ポスト・コロニアル理論でしょう。
留学当時、アルジェリア独立戦争の真っ只中。その思想的イデオローグであるフランツ・ファノンの著作を読みこんでいたようです。
欧米の帝国主義が、世界の人々を苦しめたことを自覚し、その欧米と決別する重要性を理解したと思われます。
ただし、ファノンが欧米の影響から脱するために、植民地者に対する暴力の権利を正当化したのに対して、
シャリーアティーはそれを否定して、自己の内面からの改革をすることが欧米からの影響離脱に繋がると考えたという違いがあります。
どうやら、ファノンのような欧米から直接的に離脱するやり方ににためらいがあったようです。
第三に、社会主義の影響も色濃いです。
彼はソ連やフランスではなく、当時社会主義であったエジプトからその影響を受けているようです。
彼は、マルクス主義は現実の世界を変えるイデオロギーではないと批判するものの、その世界観はマルクス主義に近いものです。
彼は、人類の歴史を私有財産の発生(第一期)、機械の出現(第二期)で分類し、この過程で一部の人間が資源を独占することを産んだと指摘します。
このような発展段階説的な説明から、現代の問題を説明するやり口は、マルクス主義に近いものでしょう。
.
679
名前:普通のやる夫さん[sage] 投稿日:2024/08/31(Sat) 15:52:34 ID:7fafc258
中立を捨てて事態の渦中に踏み込んでしまったら全体を公平に観察するのは難しいから
我は観察者たらんとする人は傍観者にならざるをえず――両立は難しいと思う
やっぱりこの人は活動家タイプなんだろうなぁ
しかし武力革命の闘士→独裁的な権力者路線に進むには学者であり過ぎた感
680
名前:普通のやる夫さん[] 投稿日:2024/09/30(Mon) 22:51:37 ID:db34c147
今月は無理かしらね
681
名前:普通のやる夫さん[sage] 投稿日:2024/10/03(Thu) 21:59:46 ID:97c03fd9
社会構成主義と社会学は別物としか言えないね
682
名前:普通のやる夫さん[sage] 投稿日:2025/01/01(Wed) 22:47:11 ID:fcb27801
9月中にできればいい(年越さないとは言っていない)
683
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/05/07(Wed) 22:35:18 ID:abc31f73
今日の投下内容
・ムハンマド・バーキル・サドルとはとは誰か
・バーキル・サドルの「法学者の政治指導論」とは何か
・ホメイニーとサドルの違いとは何か
/ ̄ ̄\
/ ─ ─\
| (●)(●)|
____. .| (__人__) |
/ \ ` ⌒´ ノ 今日の内容からいよいよ後半戦、イランの法学者の統治論だけでなく
/ ─ ─\ .}
/ (●) (●) \ } 同時代により精緻化されたサドルの議論を見ていこうぜ。
| (__人__) | ノ.ヽ
/ ∩ノ ⊃ /∩ノ ⊃| | 彼の議論を見ることが、現代のイラクにも繋がっている感じだお。
( \ / _ノ | |/ _ノ | |
.\ “ /__| | /__| | ※9月にやると言っていたのにかなり先延ばしになってごめんなさい!
\ /___ //___ /
.
684
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/05/07(Wed) 22:36:12 ID:abc31f73
n __ __ .__ _,n_ . __ __ .__
,⊆ ⊇、 に二二l└┘/7 └‐┐ | に二二l└┘/7└l n | に二二l└┘/7 └‐┐ | に二二l└┘/7
 ̄U ̄ <ノ ┌‐┘ | <ノ U U <ノ ┌‐┘ | <ノ
 ̄ ̄  ̄ ̄
―2019年 2月 普通大学イスラーム学部キャンパス―
,.ィ=t.、 i! i! i!. ,.ィ=t.、
| | | |_i!i=i!i=i!i_| | | |
| | | | |!l>=<l l | | | |
| | | | |<:○:>| | | | |
| | | | |!l:TT:l!| | | | |
| | | | |!| | | |i| | | | |
| | | | |!| | | |i| | | | |
i‐┬┬┬┬┬┬┬┬:| | | | |!| | | |i| | | | |
|‐┼┼┼┼┼┼┼┼:| | | Eヱ夲オヨ | | |
. ___|‐┼┼┼┼┼┼┼┼:| | | | |_i_从i_|_| | | |
|E| |ヨ|‐┼┼┼┼lニニニ二:| | | | | |!| |i| | | | | |二ニニニl
|E| |ヨ|‐┼┼┼┼`△ | | | | |_|!|_|i|_| | | | | △´
|E| |ヨ|‐┼┼┼┼‐| |_.il._.i!_.| | | | |_|!|_|i|_| | | | |_.i!_.il_.| |
|E| lニニニ二二二二| | |i| |i| i| | | | | |!| |i| | | | | | |i| |i| | |二二二二ニニニl
lニニニニニ二△ △. | |_|i|_|i|_i| | | | | |!| |i| | | | | |_|i|_|i|_| | .△ △二ニニニ
r┤.i! i! r=i | |_i!_i!_| |_i!_i!_.i!_| |_|i|_|i|_i! | | | | |!| |i| | | | | |_|i|_|i|_| |_.i!_i!_i!_| |_i!_i!_| | .r=i. !
| .|_|i|_l|_| |_i!_ .| | i! i! | | || || ||..| | |i| |i| |r=ffli==、r==t==jj=i| ̄|| |i| | |..|| || || | | l| l| | |. _i!_| |_|
| .|_|i|_l|_| |_||_|.| |_l|_l|_| |_||_||_||..| |_|i|_|i|_|. |l l| |.l l.| |l l| ||_|i|_| |..||_||_||_| |_l| l| | |. _l|_| |_|
| .| |i| l| | | || |.| | l| l| | | || || ||..| |_|i|_|i|_|. |l l| |.l.,.、l.| |l l| ||_|i|_| |..||_||_||_| |_l| l| l木木木. |_|
| .|_|i|_l|_| |_||_|.| |_l|_l|_| |_||_||_||..| | |i| |i| |. |l l| /.:: \ |l l| || |i| | |..|| || || | | l| l.z木木木木.|
| .|_|i|_l| | |_||_|.| | l| l| | | || || ||..| |_|i|_|i|_|. |l l|〃.::::::::::::ハ.|l l| ||_|i|_| |..||_||_||_| |_l|z木木木木木
| .| |i| l| | | || |.| |_l|_l|_| |_||_||_||..| | |i| |i| |. |l l|{{::::::::::::: : }}|l l| || |i| | |..||_||_||_| |_林林林林林林
森森森森森森森森森二二二二二二二二L._|l_l|{{::::::::::::: : }}|l_l|_二二二l森森森森森森森|i|森森森
森森森森森森森森森森森森森森森森 .; ,,, .:':' ,:,:,:,:,:,:,:,:,:,.... ゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙
.
685
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/05/07(Wed) 22:39:12 ID:abc31f73
―とある講義室―
::|| :| : l ̄~| ̄|.:| :| |__| . . . .:::::|:| :|:|:| || | | :||
 ̄ |_____| : |─┤| ̄|‐┘.:| . . .::: .: |:| :|:|:| || | | :||
:┌‐┐:r‐┐ : |‐「二l‐ r‐‐ュ :| .: .:: .: :|:| :|:|:|______,|| | | :||
: |__|:└‐ | ̄|___|__|_」 .:__|:|_:|:|:| ̄ ̄~ || | | :||
: : : : .  ̄. . . .:| |斗=ミ___||zzzzzzzzzz| |zzzzzzzzzz:||zzzzzzz
: : : . . . . |二||_r=ミ二二|コ______ ,.ィ __
-‐rr ┯=ミ | ̄|三「| . . .: : :|灯|‐‐\__ヽ. '´ ,. '´ ,ィ ::/// /〉. . .
:::::i{::::::i{:::: |二二二二ニ:l . .: : :||::ハ ̄r≦zzzzzz≦zzzzzzzァ'´|:|__////__//: : : :
 ̄i{ ̄i{ ̄| |IIIIIIIIII::|─--,. _,,-=-||/__',_,|:|二二i|:|:|:l__,|l_,|:|∠二7///:_://_:_:_:_:_:_:_:_
::::__{:::-i{:: :|二二二二二ア|'´ |=ニ=‐¨: : : : : :::::::/,|:|マ:,: Ⅵ:|:|:| ̄~||~|:|=:ニ二// ̄~,ィ: : : : : : : : :
'´::::{::::_jI斗‐-::::::::;;;__:: |:::| |´: : : : : : ://,|:| マ:,.ィ:|:|:| : : : :::|:|: ://:/∧:, ̄ マ:, : : : :
s≦::::::::::::::::::::::::::: :。s≦|:|:::|/´ __: : : : : : : ::|:l==== |:|:|:|_:_:_:_:,,|:|::::::://:::/ハ:, : マ:, : : :
:::::: ̄^^~、。s≦::::::: 。s|:|:::| ,. '´  ̄ ̄ ,.ィ |:|............|:|:|:| ̄:: ̄|:|:::::///::::::マ:, ,.ィ‐-: :_
::::::><::::::|::::::。s≦>''レ '´ ,.ィ㌻|´/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/'/,::::::::::::::`''´
'´::::::::::::::。s≦::。si(>'´ ,.ィ㌻: ::| |: : :||^'ヽー-:::::::::::_/: / '/,: `y'7
:::::。s≦:::,.ィ升-_{二 ─-- ...,,,___,ィ㌻ ,.イ_|: : ...||/: : : : : : : : : : : : :/ ̄^'/,ー'ヘ
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. /.:.:.:.:.:.:/ ̄:.:.:.:.´:.:.:.:.:.\
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. √-=ニ/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.| \:.:.:.|:.:.|
/ {:.:.: ―:.:.:.:.:.:.:/ : //|:.:| '⌒:.:.八:|
. (二八:.:.:.-| :.:.:.:.:// /'⌒ |:.ノ 仍うV:./ノ
. {ニニニ|\:.:|/!:.:./|__笊示ミ ヒツ {:/
. {ニニニ|:.:Λ|人/ :| 〈 ヒツ | はい、ちゃんと以前渡した「シャリーアティー」に関するレジュメは読み込みましたね?
. \ニ/|:/:.:{( 人:.:.\ 人
/:./:.:.:.|:.|>-\:.:.\ ' ´ ⌒` あれも、大事な思想ですからね~~
. // /:.:.: 人|:.:.:.:.:.:.:.>- \ー―く \
. /:.:.:. /:.:/:. 〈\_彡'´ ) ) _ はい、じゃあ今日の講義は続きと言うことで……
/:.:.:.:.:.://:/:.:.:.:{\__  ̄ ̄~^'  ̄ }‐┐||
//:.:.:.:.:.:./:.:.:./: |:.:.:.{ ァ=-‐''~⌒\___ノrヘ:||
./ {:.:.:.:.:. /{ :.: |:.:.:|:.:.:八______ ,.イノ / ∨/⌒ }
{ 八:.:.:.|人:.:.:. |:.:.:|/{. . ./ / / {/⌒ 〉
\( \:.|:.:.:| {. ./ / { ∨⌒i|
人:.:| {.// } | |i||
/( \ /Λ } } } |i||
. ( \ / / } } V} |i||
. \ / / 〈 人 } |i||
/ ̄ ̄\
/ ヽ_ \ なあ、教授……なんかイラン小ネタとかないんっすか?今日は
(●)(● ) | ____
(__人__) | / \
l` ⌒´ | ./─ ─ \
. { | / (●) (●) \ 朝1発目からはしんどいから、ちょっと軽い話から進めても……
{ / | (__人__) |
ヽ ノ \ ` ⌒´ ,/
/ ^ヽ / \
| | | |
.
686
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/05/07(Wed) 22:43:26 ID:abc31f73
,...::''"゚~ ̄~゚^' ̄~"'':...、 /
/:.::.::/:.::.::.:.:/⌒:.::.::.::.:\ /ヾ/
/:.::.::.:/:.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::\ /ヾ/
. /:.::.::.:/:.::.::.:.: /::/:.::/:.::Λ:.::.::.::.::.:.: \ /
. __ /:.::.::.:/:.::.::.:.: /::/:.::/:.::/ Λ::|:.::.::.::.::.::.:.::. /ヾ/ヾ/
{二√ :.:.: |:.::.:.:|::/|__|_,ノ |::|:.::.::.:: |:.::.::.::.
{二| :.::.::.: | :.: _|≫==x/:|/ |Λ:: | :.:|::|::| |
{二| :.:.:/:.:|:.::.:Y _)(:.:「 二|⌒:.::|::||ノ
. V/|:.:i"⌒|:.::.::| 乂ツ ,ノ灯Y:|:.:.:|Λ|
{//:八 |:.:.:|'' ヒソ ノΛ ノ |
{/:/:.:: \|:.:.:Λ ' ''/::|:.:.:| ノ な~にっ 馬鹿なこと言っているんですか、ただでさえ講義の遅れが発生してる上に
/::/ :.::.:.: 人 :.::.::.: , , 八:|:.:.:|〉
. /:.::.::.:/ :.::.::.:: \::ト イ:.::.::|:.:.:|∧ 1講義からいきなり休憩入れるわけないでしょ!
/:.::.::.:/ :.::.::.:.:|:.:.:| \, > <:|:.::.:| :/ :|:.:.:|: ∧
. /:.::.::.:/ :.::.::.::.: |:.:.:|::| 乂|:.::.:|/:: Λ :| :: ∧ はい、ペン出して メモを取ること。まずは真面目に講義やりますよ
/:.::.::( ̄ ̄ }―|:.:.:|┴ .,_ r――‐/:.::/<:.::.::.::.:.: |
:.::.::.::└┐ \\| /:.::/ )\:.:.: |
:.::.::.:/ └┐ >‐┐ ┌<|:.:.:| 厂 Λ∨|
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ●)(●) 結構楽しいんだけどなぁ 小話
. | u. (__人__)____
| `⌒´ノ─ ー\
. | } ●) (●)\ まあ、次の時間にはしてくれるよ……きっと
. ヽ }⌒(__人__)⌒ |
ヽ ノ /
/ `ーー/⌒^)(⌒^ ー )
| 、 _ __,,/ヽ / \
.
687
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/05/07(Wed) 22:44:09 ID:abc31f73
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
やる夫で学ぶ「法学者の統治論」
第8話 バーキル・サドルの「法学者の政治指導論」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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,. __i|_
{::::::::::::ハ
V/|:::::::i!
i|| i:::::::i!
i|! i:::::::i
i! 〉:::ノ
/::/
i:::::|!
`´||.
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||.
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.
688
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/05/07(Wed) 22:47:43 ID:abc31f73
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
0、前提の話としてのイラクのシーア派
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
______
/:.:.:.:._:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\
./:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: ̄ ̄\
//:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..
/ |:.:.∨:.:.:.:.:.:.: /:.:.:.:.:.:.:.| :.:.:.:.:.:.:.:.:.:. |
{ |--:|:.:.:.:.:.:. /:.:.:.:.:.:.: 人:.:.:Λ:.:.:.:.:.:|
{ |:.:__|:.:.:.:.:.:/:.: /|/ |/ ̄|:.:.:.:. |
.. ̄{__|「ヽ|:.:.:.:|/:.∠__ __|:.:.:.:. |
|l |:.:.:.:|  ̄∩ ∩ ̄ノ:.:.人|
|:\NV:| ∪ ∪ イ/ さて、これまで数話に渡って、ホメイニーを中心とするイランの話をしてきました。
八:.:.:|:.:.:.:.ヽ j:〈
./:.:.:.: 人 :.:.:.:| イ:.:.| これは、法学者の統治を掲げて、実際に革命に成功したのは
/:.:.:.:.:.:.:.:.:\:.:|) ≧=≦ :.:.: |:.:.:|
./:.:.:.: __/ {∨ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄〉 イラン=ホメイニーのみという重要性を鑑みてのことです。
/:.:.:./ : :: :{ \ / p /
./:.:.:./ :: :: ::l! \ / ( ̄) /
{:.:.:./ : :: :: ::{ / /
{:.:./: :: :: :: :弋、 ./ /
|: 八:.|.: : : :. :. :. :.__/ /
|/ \ /: :/: { 二 ノ {  ̄\
-< ̄ ̄\――
. / :::::::::::::::::::::::::::\::::::::::\
. /::::::::::::/::::::::::::::::::::::: ∨::::::::::',
. /:::::::::::/|Λ::::::::::::\::::::::::|―::::::::|
{::::::::: /八 \<⌒\::: |::::::::/| \
{::::::::::⌒ x==笊ミ|::::|::/ : ノ二 |
人:::::::y'笊 Vリ八N'⌒V::::|二ノ
\::ハ リ ,, ,/:::::::|,ノ ノ::::::|/
/::{' ′ / :::::: 厂::::::::::|\ しかし、そうした成功例を問わない話で見るならば、
. /:::人 - /::::/:: ノ|:::::::::::::|二}
/::::::::/^丶 _/::::// |:::::::::::::| ̄ イランと同じく…いやそれ以上にイラクにおける「法学者の統治」は重要な話です。
. :::::::::′ ___{:::/-< |:::::::::::::|\
. 人:::::| / 人{ `|:::::::::::::|:::::::. それはなぜかわかりますか?
ヽ|. 〈 / 八:::::::::::::::::::::|
ノ//⌒ \:::::::::::::::|
/ / ∨ ∨:::::::::|
/ / / | :::::::::|
{ { / .| :::::: ノ
.
689
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/05/07(Wed) 22:55:35 ID:abc31f73
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ●)(●) 教授、それ前の講義でやったところだよな?
.| (__人__)
| ` ⌒´ノ 例えば、>>307が示すように、イラクはイランと並んでシーア派教育改革を成し遂げたところだし
.| }
.ヽ } >>406で示したように、そもそもホメイニーはこの理論をイラクで編み出したからじゃないのか?
i .ヽ '' ,,, ノ !
li _>\ ( li
/⌒ ̄" ゛ ヽ !
/ ノ、 }\
< < | ` '{.> )
\ , ーっ ),,、/
ガタッ `ー=ミ} (彡 }
''^゚~ ̄ ̄~゚^'' 、
/:.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.:::\
//:.::.::.:: /:.::/Λ:.::.::.::.::.::.::.::.::.:\
/:.:/:.::.::.::.:::|:.:/ |:.::.::|:.::.::.::.::.::.::.: |_
| :.::.::.::.::.::.: |::| |:.:::|:.::.::.::.::| :.::: |:i:i:i\
|::| :.: |::\:Λ| \::\/:.:|:.:::|::|:i:i:i:i:i冫
|::| :.: |::/|/\_ ,_/ \::|:.:::|::|\/
|::| :.: |Y灯下ミ 灯下ミY|:.:Λ|i:i:i:\
|/\::人 Vソ Vソ ノ/:| ノ|:i:i:i:リ その通り、基本的にはよく答えられています。
. 乂 {|\| '' ´ ''/|:.::.:| : | ̄
/:.:八 ┌ , ノ:|:.::.:|:.:::', 思想・学術面でイラクのシーア派抜きに法学者の統治を語ることはできません。
. |:.::.::|个:... ..::个 |:.::.:|:.::.: ',
. |:.::.::|:.::.::.::.::|>r< |:.::八:.::.::: | :.::.:: ', ただ、もう1つ、ホメイニーは確かに革命論をぶち上げたことに革新性がありつつ
Λ :.::|{Τ \__::\ト|:.::.::.::.::',
/ \|{ \_,. ―┐| }\ノ:.::.::.::.::.:| その後の、国家の在り方については触れない、あるいは興味は持たないこと
/ />''´ ノノ_ノ \:.::.::.::.:|
. / / /⌒´ \:.::.:| そのことは>>406でも示されています。
{ ∨ ,、丶゛ ∨ ∨ノ
\ / / } }
.
690
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/05/07(Wed) 22:58:57 ID:abc31f73
____ __
/ ̄:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\:.:.:.\
/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\:.:.:.\
. / .:.:.:.:.:.:.:.: //|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\:.:.:.\
. / .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./ |:.|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: \:.:.:.:.
/ .:| :.:.:.:.:.: / :| |:.|\ :.:.:.:.:.:.:.:.:.: |:.:.:.:.: |:.:.:.:}――┐
|: /|:.:.:.:.:. /|:.:.| |/ \―|―:.:.|:.:.:.:.: |―‐〉ニニ|
|:.|||:.:.:.:.|―― \|\:.:.|:.:.:.:.: |:.:.:.:|二二|
|Λ|:.|:.:.:.||/ イ^丁⌒>Λ:.:Λ|― |\二│ 結局、ホメイニーは色々苦労しながらその後国家建設をしたわけですが……
| |Λ:.:.| イ^丁 Lノ /∨:|:.:.:.:.:.|ニl\ノ
\:| Lノ , , /:.:.:|:.:|:.:.:.:.:.|ニ| 今回紹介するバーキル・サドルは、同じ法学者の統治を唱えつつも
/:.:| , , /:.:.:. |:.:|:.:.:.:.:.|ニ|
/:.:.人 〈⌒ヽ |:.:.:.:. |:.:|:.:.:.:.:.|⌒ 革命論に傾倒するのではなく、イスラーム国家の在り方について論じた
/ :.:.: /|\ |:.:.:.:. |:.:|:.:.:.:.:.:l
. ;.:.:.:.:/ :l:.:.:.\__ |:.Λ:ノ:.:|:.:.:.:.:.:.l 極めて優秀な思想・理論家で、現代のイラクにも影響を与えています。
|Λ/ l:.:.:.:.:.:|:.:.:|:.|:.:|Y^Y^|/^7:.:.:|:.:.:.:.:.:.:l
l:.:.:.:.:.:|:.:.:|r<X{__/X/⌒\:.:.:.:.:.:.:l
-‐……‐
/:::::::::-‐…<::::::::::\
//:::::::::::::::::::::::::::\:::::::::\
/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
/:::::::/ ::::/ ::: / |:::::::::::::::::\|
|:::: / \::/:::/ |:::::::::::::|:::ニ|__
|:::::|笊㍉/ 、__|_:::::: |::ニノ 〉
__ \| Vソ _ ノ::::::::::::/::/{/
. ⊂ニニ⌒  ̄ ̄ ̄| ⌒ ーへ ̄ 从 , てう㍉イ:/::::::Λ〉 /\
Lとノ ̄ ―-只 |:::::\ ..:::/::|::::::::::| / つし〉 というわけで、そのサドルを始めとするイラクの系統を見ることは
〈ノ∨  ̄ ̄ ̄\_ |::: Λ{\_ 个/:::::|::::::::::| | ノ }
| V|::/ { / | |:::::Λ:::::八 / / ホメイニー型以外にも、「法学者の統治」は存在し
|:::八{ \/ ノ |/ \:: / /
/ √ ̄ }< ⌒/ /\_ その多様性の理解にもつながるということになります。
/ ノc / : \ 〈 { \::/⌒
{ / ::::::::::|\{\__ノ〉
/{ | \ Λ ::::::::::|::::::`ー<
/ | \ \::: ノ\:::::::/ ̄\
| \:::: }\{
| | \ \
.
691
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/05/07(Wed) 23:02:37 ID:abc31f73
_ ____
___ /:::/::/::::::::::::::::::\ /)
. {二 /_/::/::/ :::::: /^|:::::: _ //L _
. {- /\/::/::: /:::⌒/ |:::::: | _、 ''゛ ̄/ / _ノ厂>―┘
∨ー/::::|:::: |::/=={ ノ⌒: | _、 ''゛ { { 〔__/
|::::: |:〈(|人乂 tリ =ミ:::ノ| ___、 ''゛ {_{  ̄
|::::: |:Λ|::::::| 、tリノ::::ノ/_、 ''゛ _、 ''゛ ただ、そのバーキル・サドルの話をする前に
|::::: | ::: |::::::| {__ノ }ノ/ _、 ''゛
/:::::::|:::::ノ__,ノ> イ/__} / _、 ''゛ この図を見てください、これは第二次世界大戦以降
/::::::::/:::: /:: }/只___//厂 /_、 ''゛
/:::::::::::/:::::::::/|/ //」 /-''゛ イラクのシーア派改革派と呼ばれた人たちが
|Λ:::::::::::::/{__,{ //_厂 //
. \|∨| L><_厂 / どういう政治の動きを見せていたかを纏めたものです。
|/ /
| /| 今回は1950~1980年までを取り扱います。
_| Λ
. //Λ 厂>
//'///Λ / `\
//////// Λ ___/ \ \
\厂ヽ////// {_/ \ \ 丶
└く_ノ///////| | \
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┌───────────────────────────────────────────────────────┐
│※今回の範囲 .│
│1950年代末~1968年 政治組織設立 イスラーム復興を目指すも直ちに政権奪取は狙わない .│
│1968~1978年 アラブ社会主義を掲げるバアス党政権成立 厳しい弾圧と反乱を経て バアス党政権奪取を目指す方向へ │
│1978~1980年 イラン・イスラーム革命に伴い、革命と国家樹立を目指した武装闘争 ....│
│ 指導者のバーキル・サドルの処刑と支援者であるイランへの侵攻(イラン・イラク戦争) │
└───────────────────────────────────────────────────────┘
┌───────────────────────────────────────────────┐
│※次回以降の範囲 .│
│1980~1988年 イラン・イラク戦争期 イランの支援が途絶えることで様々なグループへの分派 │
│1988~2001年 湾岸戦争などでの反乱も弾圧 社会福祉を重視するサーディク・サドルの活動 ......│
│2001~現在 イラク戦争によるフセイン政権打倒。シーア派の派閥分裂と法学者の統治理論の衰退 .│
└───────────────────────────────────────────────┘
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
692
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/05/07(Wed) 23:06:26 ID:abc31f73
/ ̄ ̄ ̄\
/ _ノ ヽ
| ( ●) | ____
| U (__人). / \
| ⌒ノ. / ─ ─\
ヽ } / (●) (●)\ バアス党ってなんだっけ……?
_ > } | (__人__) |
 ̄ ̄` 、__ノ \ ` ⌒´ /
 ̄`'‐- 、 > ー‐ < いやいや覚えておけよあれだよ、イラク戦争の時サダムフセインのさ政党
ヽ / / ̄彡ミヽ、
V ヽ / / ヽ ヽ あーっ……
ヽ Y / | |
入 ヽ ノ ヽ ノ
-―-
//:..:..:..:..:..:..:..:\
_ /::/:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..丶
. {ニニ|:/:..:../:..::⌒/^|:..: |:..::|
. {ニニ|:ト| :..|x=ミ/ ノ⌒|:..::|
. ∨//::VΛtり ` x==ミ::ノ
. 〈ニ/:..:|:..:..:|'' ⌒イノ んー……語弊がありますけど、まあいいでしょう。
/:..:: |:..:..:ト ` _ノ^〉ヽ
. //::/V人| T/ ┌‐┘:..| バアス党と言うのは、アラブ社会主義の政党で
/ /:..|二二\//|_|ニニ∨
/ /:..: |ニニニ(__/[ ̄ ̄]ニ| アラブを統一するというアラブナショナリズムと社会主義を結合した政党で
/:..:: Λニニ∨二 |ニニ|二|
. ∨ :..:..:: Λニニ∨__.|/ ̄Τ⌒\ _| かなり政教分離の思考が強く、国が認める文化としての宗教しか認めない立場です。
|:..:..:..:..:: Λニニニニニ 厂\ | ´ - _
|∨\:../ Λニニ厂 ̄ ∨ リ」 --―┐ そのため、政治運動に参加する、ウラマーというのは弾圧の対象になったわけです。
---==ニニニ/┼┼/ | |┤i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i|
i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i|┼‐/| / | |┤i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i|
i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i|┼/‐| | Λ |┤i:ニ==-- ┴ _
.___ 二ニニ==-|‐/┼| | / | |┤ _´ - _
. |/┼lノ | ./ーく| |┘==ニ二i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i
==ニニニ二└―<┼| |ー┼| /:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:
i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i ̄| |  ̄ | 〈:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:
i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i|乂_,ノ、 Λ__ノ|:i:i:i:i:iニニ==---  ̄
i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:iニ==--| ニニ V 二二|
==-- \ニニ{ ニニノ
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693
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/05/07(Wed) 23:13:14 ID:abc31f73
,. -‐……‐- .,
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|八:::::::〈 Vツ 、 |/|/ } \_〉 まあ、フセインも宗教を弾圧し、自己の正当化に利用していたと思ってください。
. \Λ /:::::::/ノ
|:::::| , 、 /:::::::/:::::| 後、>>261-312の20世紀シーア派の状況を思い出してください
|:::人 /:::::::/::::::::|
/:::::::个 :::::::::/:::::::::::| 近代化の過程で、イスラームが国家により排除
/::::::::::/|:::|::::::|≧≦ {::::::/::::::::::::::|
/::::{::::::::/_ノ:::|::: ノ /\{ ̄ ̄⌒\ その中で、教育改革を経て出てきたのが、イランではホメイニー
/:::::: /\:::{ ̄ 〈 / / |
. {:::::::/ { 只 ̄ / __ | そして、イラクでは今回紹介するバーキル・サドルというわけなのです。
. {:厂{ {_ /⌒ |⌒\ /´ /〉
/ //  ̄`\_ノ / ̄ニつ /:::::Λ
__/ ( / \_/ ⌒\> /::::::::::Λ
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/:.::.::.:/:.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::\
. /:.::.::.:/:.::.::.:.: /::/:.::/:.::Λ:.::.::.::.::.:.: \
. __ /:.::.::.:/:.::.::.:.: /::/:.::/:.::/ Λ::|:.::.::.::.::.::.:.::.
{二√ :.:.: |:.::.:.:|::/|__|_,ノ |::|:.::.::.:: |:.::.::.::.
{二| :.::.::.: | :.: _|≫==x/:|/ |Λ:: | :.:|::|::| |
{二| :.:.:/:.:|:.::.:Y _)(:.:「 二|⌒:.::|::||ノ
. V/|:.:i"⌒|:.::.::| 乂ツ ,ノ灯Y:|:.:.:|Λ|
{//:八 |:.:.:|'' ヒソ ノΛ ノ | といっても、図にあるように、いきなり革命ではなく
{/:/:.:: \|:.:.:Λ ' ''/::|:.:.:| ノ
/::/ :.::.:.: 人 :.::.::.: , , 八:|:.:.:|〉 まず組織設立から穏健な運動→より協力政治的な運動→武装闘争と流れが変わります。
. /:.::.::.:/ :.::.::.:: \::ト イ:.::.::|:.:.:|∧
/:.::.::.:/ :.::.::.:.:|:.:.:| \, > <:|:.::.:| :/ :|:.:.:|: ∧ これは、イラクの状況もさることながら、隣国イランの革命状況にも左右されている証でしょうね。
. /:.::.::.:/ :.::.::.::.: |:.:.:|::| 乂|:.::.:|/:: Λ :| :: ∧
/:.::.::( ̄ ̄ }―|:.:.:|┴ .,_ r――‐/:.::/<:.::.::.::.:.: | というわけで、この図を踏まえた上で、バーキル・サドルの話をしましょう。
:.::.::.::└┐ \\| /:.::/ )\:.:.: |
:.::.::.:/ └┐ >‐┐ ┌<|:.:.:| 厂 Λ∨|
,
694
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/05/07(Wed) 23:18:09 ID:abc31f73
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①ムハンマド・バーキル・サドルとは誰か?
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{ |--:|:.:.:.:.:.:. /:.:.:.:.:.:.: 人:.:.:Λ:.:.:.:.:.:|
{ |:.:__|:.:.:.:.:.:/:.: /|/ |/ ̄|:.:.:.:. |
.. ̄{__|「ヽ|:.:.:.:|/:.∠__ __|:.:.:.:. |
|l |:.:.:.:|  ̄∩ ∩ ̄ノ:.:.人|
|:\NV:| ∪ ∪ イ/
八:.:.:|:.:.:.:.ヽ j:〈 では、このムハンマド・バーキル・サドルとは誰か?
./:.:.:.: 人 :.:.:.:| イ:.:.|
/:.:.:.:.:.:.:.:.:\:.:|) ≧=≦ :.:.: |:.:.:| 簡単に彼の人生を振り返りましょうか。
./:.:.:.: __/ {∨ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄〉
/:.:.:./ : :: :{ \ / p /
./:.:.:./ :: :: ::l! \ / ( ̄) /
{:.:.:./ : :: :: ::{ / /
{:.:./: :: :: :: :弋、 ./ /
|: 八:.|.: : : :. :. :. :.__/ /
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695
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/05/07(Wed) 23:23:50 ID:abc31f73
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/三三ニヽ
./ニ三三三ニ`、
{ニ三三三三ニノ
',三三三三ミ/ ト
',ミ三三三ミノ |.l,.-、_
_.,/ニ三三ミ/ ',三ミ~〉
_,,.-‐=ニ三三三三`- .,,._ ヽ三ミ〕
,'三三三三三三三三三三三ミ` 、 〉ニミ',
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.,'ニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニ.',
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i三三三i .',三三三三三三三三三三ミl
|ニ三三| |ニ三三三三三三三三三ミ.l
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ムハンマド・バーキル・サドル
1935 年3月日イラクのカーズィミーヤでサイイド(ムハンマドの子孫)の家であるサドル家の一員として誕生。
サドル家は元々、レバノン南部を発祥とする一族で、12イマーム派7代目イマームムーサー・カーズィムの子孫とされています。
バーキル・サドルはどうやらムハンマドから数えて38代目の子孫ということらしいですね。
ちなみに、サドルが姓で 名前はムハンマド・バーキル、アラブ人は良く父親から名前を取ってくる(父称)のですが、
彼の場合は、ムハンマド・バーキルで1つの名前。父称がなく割と珍しいですね。
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696
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/05/07(Wed) 23:27:48 ID:abc31f73
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./.ニ三"''-、
/三三三三ミヽ
|ニ三三三ニノ
',ニu.三三ミノ
.i三三三ミ,' なんか、ホメイニーもそうなんだけど、父を早く無くすこと多くない?
,.、ノニ三三ミノ
.,、 _,r.'"ニ三三ニ.└ ,,_
ii.,j.! ,') _ ., -.''ニ三三三三三三三ミ"''‐、
.',ミч{// .ノ.ニ三三三三三三三三三三ミi
. ` 、ニミヽ .jミ三三三三三三三三三三三ミi
.ヽ.ミゝ, .j´ニ三三三三三三三三三三三ミi
./ニニヽ_/ニ三三三三三三三三三三三三ミi
`、三三三三ミ.人ニ三三三三三三三三三三i
.`、三三三/ .`、ミ三三三三三三三三三ミi
'.,ニミ/ .',ニ三三三三三三三三三.i
`" .〉三三三三三三三三三ミi
/ニ三三三三三三三三三ミ',
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バーキル・サドル(長いので以下これに統一)の幼い頃はあまり知られておらず、
1937年に父が死に貧困に陥ったこと、1945年シーア派の聖地でもあるイラクのナジャフに移動したこと、
父の死後は兄のイスマーイール、母方の伯父高位ムジュタヒドのムルタダー・アール・ヤースィーンの保護を受けていたようです。
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697
名前:普通のやる夫さん[sage] 投稿日:2025/05/07(Wed) 23:28:04 ID:28ba6b21
議員全辞職やらかした派閥の創始者だっけか
698
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/05/07(Wed) 23:39:57 ID:abc31f73
, -――- 、
/三三三三=ヽ
/三三三三三三ヽ
l三三三三三三三}
l三三 三三三三/
ヽ=三三三三三{ 25歳でマドラサを卒業して、もうマドラサの講師になっていたぜ。
∨ニ三三三三/
__/三三 三三/ 同じころに、マルクス主義…つーか唯物論批判の著作も書いていたぜ
_, - '" ´三三三三三 ヽ、_
/三三三三三三三三三三三三三三ヽ、
/三三三三三三三三三三三三三三三三ヽ
/三三三三三三三三三三三三三三三三三三\
/三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三\
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三\
三三三三,三三三三三三三三三三三三三三三三三三三\
三三 / ヽ三三三三三三三三三三三三三三三!、三三三三ヽ
三/ ヽ三三三三三三三三三三三三三三| `ヽ、三三三 \
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そして教育歴についてですが、
カーズィミーヤでは、>>294-297でもちらっと触れた改革派の教育プログラムを提供するムンタダー・アン= ナシュルで教育を受け
ナジャフでは、当時のシーア派最高権威(マルジャア・アッ=タクリード)ムフスィン・ハキーム(1888~1970)
高位ムジュタヒドのアブー・カースィム・フーイー(1892~1992)に師事していたと伝えられます。
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699
名前:普通のやる夫さん[sage] 投稿日:2025/05/07(Wed) 23:44:09 ID:350bbcff
資本主義にも喧嘩を売ってるのでセーフ
700
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/05/07(Wed) 23:50:22 ID:abc31f73
_
/ニ三ミ.\
,'ニ三三三三ヽ
'、ニ三三三三ミ}
.ri `,ニ三三三ミ,'
._,-、!.| '、ニ三三ミ,' 政治不介入主義なんて男じゃねえんだよ!!
.〈~三ミ,' '、ニ三三ミ`、._
._f三ミノ ._ ,, .-''ニ三三三ミニ=‐- .,
.,'ニニ〈 ,r."ニ三三三三三三三三三三ミ`,
i三三./ .,.-'ニ三三三三三三三三三三三三ミ',
,'三三i_/´ニ三三三三三三三三三三三三三三.',
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iミ三三三三三ニ. ,三三三三三三三三三三三三三ミ',
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そうやって、イスラーム教育歴を積んできたバーキル・サドルですが、
1958年のイラク革命以降、1963年のバアス党による政権奪取以降急速に、政治問題に介入するようになります。
というのも、イラク革命前後当たりの共産党の影響力が伸び、ウラマーですら共産党員という事例が見受けられる一方で
高位のウラマーたちは社会的・政治的問題に無関心だったことに怒っていたようです。
そうしてできたのが、1957年のイスラーム・ダアワ党です。
この組織は現代のイラクにおいてごく一部を除いた、シーア派系政党の元祖にあたる存在で、そのイデオローグとして君臨しています。
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