やる夫で学ぶ「法学者の統治論」

レス数:1000 サイズ:1551.19 KiB 最終更新日:2025-07-08 00:34:46

951  名前:普通のやる夫さん[sage] 投稿日:2025/07/03(Thu) 22:04:25 ID:b70a83af
カリフがいても正しい解釈するとは限らんけどね

952  名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/07/03(Thu) 22:06:34 ID:bb10a7fc


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◎欧米やイスラエルに対する考え

・対欧米
「西側諸国政府は人種差別的態度を政治目的達成のために利用し続けている……」
「彼らは反アラブ、反イスラームの感情を利用して政治的利益を得、移民コミュニティに圧力をかけ、同化政策を受け入れさせようとしている」
ttps://web.archive.org/web/20110525050141/
ttp://www.lebanonwire.com/0206/02060802DS.asp

EX:対イスラエル
「いかなる形であれシオニストの敵との関係正常化はシャリーアによって禁じられている」
ttps://www.upi.com/Top_News/Special/2009/09/14/Fatwa-forbids-ties-with-Israel/19851252954295/

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         |Λ|:.|:.:.:.||/      イ^丁⌒>Λ:.:Λ|― |\二│      さて、ここまで著作から、彼の圧制者に対する抵抗感を見ていきました。
         |  |Λ:.:.| イ^丁    Lノ    /∨:|:.:.:.:.:.|ニl\ノ
            \:|  Lノ       , ,  /:.:.:|:.:|:.:.:.:.:.|ニ|         もう少し、彼の発言をニュースから攫って 欧米・イスラエル観も見ておきましょう。
              /:.:| , ,           /:.:.:. |:.:|:.:.:.:.:.|ニ|
          /:.:.人     〈⌒ヽ     |:.:.:.:. |:.:|:.:.:.:.:.|⌒         欧米に関しては、サドルと同じことを言っているのが分かると思います
            / :.:.: /|\         |:.:.:.:. |:.:|:.:.:.:.:.:l
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953  名前:普通のやる夫さん[] 投稿日:2025/07/03(Thu) 22:07:09 ID:f6d20f99
まーそうなんだが世界中に点在するウラマーがそれぞれの場所の事情に合わせてイスラム教解釈してたらメチャクチャな分裂なるやん、
イスラム教全体を代表する存在の公式見解的なものがあればそういう分裂を抑制しうるんじゃねと

954  名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/07/03(Thu) 22:15:41 ID:bb10a7fc


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             Lニ|::.::.:{ |八人 Vり    tりノ:/ 丿
            |::.: 人 ┤::ヽ      '  「\               一方で、イスラエルに対してはより強固な姿勢で、関係正常化は
            |/::.: | >|::.::.:|     ,   人::.:|
                / ::.:: |::.::.:|::.::.:|>   _´ イ \::.:|              シャリーア(イスラーム法)で禁止されているとまで言い、一切の妥協を許さない姿勢です。
            // ::.::.::.::. ノ/∨、   }\:|__  ∨          r…‐-ミ
              //::./ ̄|※    \__/   ※| // ̄ ̄ ̄ ̄~~゚"''<⌒  \
          //::.::|     ̄|※  /Λ\,厂 //:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. /:.:.:.:.:.:\\       ただ、このファトワーの文脈はパレスチナ問題の文脈かつ
            ///::.::|.      ̄|/|i:i:i:ic:i∨//:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. /:.:.:.:.:.:.:.:.///
        / :|::.::.:|          〈|i:i:i:i:i:i:i:i//:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:(\ /:.:.:.:.:.:.:.:.///        シオニストと名指ししていることを考えると
         {   |::.::.:|      |  [|i:i:i:i_/┐:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. : :\\:.:.:.:.:.:. //
          |::.::.:|  丶  |  〈|i:///:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. /⌒  |:.:.:.:.: //          ユダヤ人、イスラエル、シオニスト それぞれを別物と認識しているようです。
            ::.::.:|    \|  [|i:|    ̄|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. {_   |:.:.:.:./
             \|   \_)   〈|i:|   /(ノ| ̄| ̄~゚"'' 、 /\ ノ\/            敵は入植・侵略を進めるシオニストだ!と言わんばかりです。
               |   ―┴―‐┬   |i:ci:|  | ̄ ̄( ̄ |  /
               |       く※ |_ノ:i:i:iノ__,ノ    > ∨
               人       >XLノ ̄ ̄ ̄\___/
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955  名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/07/03(Thu) 22:21:34 ID:bb10a7fc



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◎まとめ
ファドルッラーは不正者は多神教徒であるという論理を示す。
その上で、彼らに抵抗することはイスラームの義務であり、一義的には平和的な手段を用いるべきだが暴力的手段も許容している。
さらに、「実際的経験に当てはまる実践的な現実の論理」という論理で、抑圧者と戦うために自爆するという殉教作戦を理論的に正当化している

また、個別の国に対しては、シオニストへの妥協を許さないとしつつも、ユダヤ・イスラエルはまた違う存在と認識

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           ∨ー/::::|:::: |::/=={   ノ⌒: |         _、 ''゛     {  {  〔__/          と、ここまで言ってきたことをまとめましょう。
             |::::: |:〈(|人乂 tリ    =ミ:::ノ|  ___、 ''゛        {_{  ̄
             |::::: |:Λ|::::::|      、tリノ::::ノ/_、 ''゛       _、 ''゛                ファドルッラーは不正者・抑圧者の正体はサドルと共通しています。
             |::::: | ::: |::::::|   {__ノ  }ノ/         _、 ''゛
            /:::::::|:::::ノ__,ノ>     イ/__}    / _、 ''゛                     そこから、なぜ抑圧者は抑圧的なのか?に進んだサドルと違い
          /::::::::/:::: /:: }/只___//厂    /_、 ''゛
        /:::::::::::/:::::::::/|/  //」    /-''゛
          |Λ:::::::::::::/{__,{  //_厂  //                              抑圧者と戦うために、抵抗の義務+暴力的手段の許容という
.           \|∨|  L><_厂    /
              |/             /                                運動面で独自の創見を見せた……と言えるのではないでしょうか。
              |             /|
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956  名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/07/03(Thu) 22:27:08 ID:bb10a7fc



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    / /:..|二二\//|_|ニニ∨            次回はこのような自爆攻撃を正当化したファドルッラーの影響があるとされる
   /  /:..: |ニニニ(__/[ ̄ ̄]ニ|
     /:..:: Λニニ∨二 |ニニ|二|             レバノンのヒズブッラーがどのような思想を抱いているかを見ていく予定です。
.    ∨ :..:..:: Λニニ∨__.|/ ̄Τ⌒\ _|
      |:..:..:..:..:: Λニニニニニ 厂\  |  ´ - _
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957  名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/07/03(Thu) 22:29:13 ID:bb10a7fc
今回の投下はここまでです。
次回は今イスラエルにかなりボコボコにされてしまったヒズブッラーを取り上げます。
イスラエルの侵略に抵抗する組織として生まれたヒズブッラーはどのような思想・戦術を練り上げてきたのでしょうか?

質問等はいつでも受け付けます。

958  名前:普通のやる夫さん[] 投稿日:2025/07/03(Thu) 22:36:34 ID:f6d20f99

959  名前:普通のやる夫さん[] 投稿日:2025/07/03(Thu) 22:38:20 ID:ffdfa4de

ヒズボラってイランの外郭団体みたいなんじゃなかったっけ

960  名前:普通のやる夫さん[sage] 投稿日:2025/07/03(Thu) 22:40:18 ID:fcfa1843

これからはヴァジラヤーナで行く

961  名前:普通のやる夫さん[sage] 投稿日:2025/07/04(Fri) 18:35:35 ID:346a6129

(標的を軍事施設に限定してるといいつつ)無差別な空爆と無差別な自爆テロの間に非道の違いはない
中東に関しては手段の是非を論じても無意味な状況にあると思う

最終的には経済面の利害に行き着き、パイをどう分割するかという話になる世俗の問題だけでなく
宗教対立を抱えているのがどうにもならない

しかも武力行使を肯定する理屈を宗教が支えているという始末の悪さ
「毒を撒こうが、ミサイルを撃ち込もうが、飛行機で突っ込もうが同じやろがい!」の一言で片づける方が清々しい

962  名前:普通のやる夫さん[] 投稿日:2025/07/04(Fri) 20:08:20 ID:039a5edc
質問つうか疑問なんだがクルアーンに自殺はダメ!って明記されてるのにいや死んでるのは結果であって死ぬのが目的じゃないからセーフなんだ!なんて理屈がマジでイスラームでは正当化されるんか?
爆弾抱えて突っ込んだら100死ぬのは事前に誰でもわかるんのに、死ぬのが目的じゃないからなんて強弁がまかり通るとしたらそれこそ曲解で逸脱じゃん

963  名前:普通のやる夫さん[sage] 投稿日:2025/07/04(Fri) 20:59:30 ID:e5bf3bc8
>>962
例えばアズハルとかは認めてないらしい
>>944にあるように自殺(インティハール)と殉教(イスティシュハード)の間に差を設けたけど追い詰められた弱者が他に手段なく防衛のために行う軍事行動をするという条件のもとに発生する自殺が殉教であるとかいうガバガバ理論やし

964  名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/07/04(Fri) 22:31:40 ID:eed2c5f7
自殺と殉教のどこに違いがあるのか?
ガバガバ理論だろというのは、日本人からすれば当然のことだと思います。
ここで、もう一度、次回以降に向けてイスラームの自殺について回答しておきたいと思います。

965  名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/07/04(Fri) 22:32:18 ID:eed2c5f7
大前提として、確かにイスラームにおいて>>939にあるように自殺の禁止はクルアーンやハディースにあるものです。
つまり、この文そのものはウラマーの解釈によって導かれた新規の物ではない。
そこから、近現代のウラマーの多くは、自殺禁止の理由を、生命は神に与えられたものだから、それを人間の都合で終わらせるのは神への反攻であるとします。

一方、中世のウラマーは、そもそもこうした部分を我々が考える自殺の禁止とは考えていなかったようです。
例えば、共同体の中で互いに殺しあうこと、あるいは自身が破滅することを指して自殺としていたのです。

966  名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/07/04(Fri) 22:33:06 ID:eed2c5f7
とはいえ、>>939にあるようなハディースは明らかにこの意味ではありません。それに対して預言者は礼拝しなかったというのは事実でしょう。
しかし、このハディースには続きがあります。、「(自殺したムスリムへ)あなたがたの仲間に拝礼をするべきだ」
中世のイスラーム法学者は、これを自殺を増やさないためにあえて礼拝しなかったが、自殺者そのものには敬意を持っていたと解釈しています。
つまり、絶対的な自殺の禁止そのものが、近現代における特殊な解釈というべきものの可能性を示しています。

967  名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/07/04(Fri) 22:34:43 ID:eed2c5f7
翻って、近現代のウラマーは自殺をどのように考えているか。
例えば、スンナ派最大規模の数、ファトワーを出していたカラダーウィーからいくつか引っ張ってきましょう。

自殺はイスラームにおいて原則禁じられている行為である…なぜならば以下のようにクルアーンに記載があるからだと。
「自らの手で自らを破滅に追い込んではならない」「自らを殺してはならない」「アッラーが神聖視した命を奪ってはならない」

しかし、特定の事情において自殺することを許しているファトワーがいくつかあります。

①拷問によって敵が情報を入手することで多数のムスリムが殺害されることが予測される場合(敵に情報を渡さず他のムスリムや共同体を守るため)
②レイプや姦通を強要され、自身を守るために結果的に死んだ場合(自分の生命、家族、財産を守って死ぬのは自殺ではない)
③パレスチナなどで独裁者や植民地主義者と戦うための自衛手段

これらに共通する概念は1つ、自殺は大きい罪であるものの、公益(共同体とか家族とか)を守るためには、自殺することが許容されることがありうるということです。

968  名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/07/04(Fri) 22:41:11 ID:eed2c5f7
無論、こうした意見はスンナ派シーア派で多様で、様々な意見が出ています。
しかし、アズハルやサウジアラビアですら、時代によって必ずしも自爆攻撃に反対しているわけでありません。

例えば、2010年の死去までグランドムフティーだったムハンマド・タンタウィは、ファドルッラーと同じ論調でパレスチナにおける自爆攻撃を支持しています。
ttps://www.haaretz.com/2002-03-22/ty-article/tantawi-validates-suicide-attacks/0000017f-f5ef-d47e-a37f-fdff247f0000

同時期2000年代のアズハルでは彼以外にも自爆攻撃を
「ユダヤ人と戦うためにはあらゆる手段が正当である」「いかなる防衛手段を用いても敵と戦うことは義務である」とか許容しています。

サウジアラビアでも1990年代にハマースの自爆攻撃を認めていたことは良く知られています。

969  名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/07/04(Fri) 22:47:26 ID:eed2c5f7
では、なぜ世界でこのように時代が代わると手のひら返しの解釈が起こるのか
いくつか理由を挙げると、このようになるでしょうか。
いずれにせよ、宗教的にどうこうではなく、軍事的・政治的理由で変節しているだけに過ぎません

①エジプト・サウジアラビア国内でアルカイダやISILのテロを許容する真似はしたくなかった
②イラクなどではイランの意向が働き、イランはスンナ派のテロを誘導する真似をしたくなかった
③わざわざ自爆攻撃などせずとも、十分な戦闘態勢が整っているあるいはリスクがデカすぎる(2000年代以降のヒズブッラーやイラクなど)

970  名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/07/04(Fri) 22:52:19 ID:eed2c5f7
ここまで論じたことをまとめると、以下のようになるでしょうか。

①確かに、自殺はイスラームで禁止されているが、その範囲そのものが時代によって異なる
②自殺が許容されるパターンも存在し、圧制者に対する自爆攻撃もそれに該当しうる可能性がある
③自爆攻撃の許容・禁止自体が政治的・軍事的事情に左右される曖昧なもの

971  名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/07/04(Fri) 22:53:52 ID:eed2c5f7
日本の人々(研究者含めて)によくありがちなパターンですが、サウジアラビアの人が~アズハルの人が~言っていたことを絶対の根拠にするのは困難です。
イスラームという宗教が、聖俗を分けない性質により、いかなるウラマーの発言も、他のムスリムを拘束することはできません(12イマーム派はちょっと違いますが)。

しばしば、アル=カイダやISILにタクフィール(背教徒宣告)するウラマーを見かけますが、
これは当事者間のみで有効なものであり、他のムスリムが従う義務はまったくありません。アル=カイダやISILを信奉しようが勝手です。
だからこそ、自爆攻撃などが、地域によっては許容しうる可能性が出てくるとも言えるのですが……

972  名前:普通のやる夫さん[sage] 投稿日:2025/07/04(Fri) 22:56:19 ID:e5bf3bc8
なるほど

973  名前:普通のやる夫さん[] 投稿日:2025/07/04(Fri) 22:59:44 ID:039a5edc
詳しすぎて草すら枯れる

974  名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/07/04(Fri) 23:03:42 ID:eed2c5f7
※追記
アル=カイダ、ISILの自爆攻撃/ヒズブッラー・ハマースの自爆攻撃のうち、
前者が拒否されて、後者が許容されやすいのは無論各国の安全保障上の問題もあります。

しかし、前者が死自体を目的化=殉教すれば天国に行けるという発想に対して、
後者はイスラエル打倒という目的を達成するための抵抗の手法と認識されていることも大きいでしょう。

しばしば、イスラーム法学の法源はクルアーン、ハディース、イジュマー、キヤースorアクルと教科書でも記載されています。
しかし、実は法源はこの4つに限られるものではなく、イスティフサーン(社会的要請や隠れた推論)、イスティスハーブ(事情継続の推定)、慣習
無記の福利(クルアーン・ハディースに記載がない公益)などがあります。


このうち、公益という点から、抵抗のための自爆攻撃というのが許容されやすいのではないかと思われます。

975  名前:普通のやる夫さん[] 投稿日:2025/07/04(Fri) 23:03:52 ID:65e17e0a
時代ごとに解釈が移り変わることすらある意味許容してるのか
その上で、前後の文脈を読んだ上で時代背景を考慮しなきゃいけないのね

976  名前:普通のやる夫さん[sage] 投稿日:2025/07/04(Fri) 23:04:12 ID:29a27833
はえーフォトワーって外交にも使える柔軟なもんなんやね

977  名前:普通のやる夫さん[] 投稿日:2025/07/04(Fri) 23:11:37 ID:039a5edc
四大法源はイチスレでよく見かけるから知ってたがまだ法源あるのか……(困惑)

978  名前:普通のやる夫さん[sage] 投稿日:2025/07/04(Fri) 23:16:20 ID:c65332ba
詳し過ぎるッピ

979  名前:普通のやる夫さん[] 投稿日:2025/07/05(Sat) 01:26:42 ID:5dc15b26
教科書以外のことまで法源にしないでほしいよねパパ
文脈を読めと言われてもって話だわ
イッチの説明がないと独学では限界がありすぎる

980  名前:普通のやる夫さん[sage] 投稿日:2025/07/05(Sat) 07:35:40 ID:7c6d60a9
こりゃウラマーみたいな専門家がいないとイスラム法で統治するなんて無理だし
いっそ法学者が統治すればええやん!みたいな発想も出てくるわけだ

981  名前:普通のやる夫さん[] 投稿日:2025/07/06(Sun) 14:16:35 ID:9dcbdeea
イスラーム法の法源を包括的に扱う教科書…ある…?

982  名前:普通のやる夫さん[] 投稿日:2025/07/06(Sun) 21:17:19 ID:e6c01638
っし

983  名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/07/07(Mon) 23:06:26 ID:b0abe767
新スレを立てますのでお待ちください

984  名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/07/07(Mon) 23:10:34 ID:b0abe767
まず次スレです
ttp://bbs.yaruyomi.com/test/read.cgi/ban/1751897307/

985  名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/07/07(Mon) 23:19:04 ID:b0abe767
法源で教科書云々は、(日本の)世界史とか倫理の教科書という意味で使っていました。
もちろん、イスラームにおいては法源学というのは存在しており、それはイスラーム法の解釈の手続き論ともいうべきもので
以前に提示した4法源+αからどのように解釈を導くべきか、どれが優先されるのかを論じた学問といっても良いでしょう。

ウラマーになろうと思うものであれば、当然法源学にテキストは存在します。

986  名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/07/07(Mon) 23:20:54 ID:b0abe767
さて、それはそれとしてやっていきましょう。

987  名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/07/07(Mon) 23:23:47 ID:b0abe767



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レバノン編
EX2-2. レバノン内戦と1980年代のヒズブッラー

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            |::::::::::::| ´ __    ィ ヒツア|::::/^Y:::|         さて、いよいよ今回はイスラエルと直接対峙しているヒズブッラーを見たいと思います
            ∨::::::八√ヒツ     ヽヽヽ厶イ)丿:八
               \{\::\ヽヽ  ゙      |::::|´:::::::::|ヽ,        ……といっても、ヒズブッラーはかなりレバノン内部の固有の論理を抱えています。
             /:::::乂T^    , 、   イ|::::|:::::::::八 ||
              /::::::/:::::|个ト..     ...イ::::/::::j:::::::∧:| ||        長めにレバノンのお話をさせていただき、そこから論じていきましょう
               |:::::::|:::::::|::|:::::::::::〕爪  ∨::::::// ̄ ̄ ̄\
               |:::::八::::√77¨´   ,..- |:::::〈_____  /⌒\
           / ̄ ̄}::/ | |  ̄`   人_;ノ   ∨: :└√ ̄∨
        / ̄〉 /. : </ ,丿廴___/::::八 /   |: : : :〈_y  √
          /   ̄}/: : : | ∨ ::::ー――‐=イ::::::::::∨   |: : : : :{   √
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988  名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/07/07(Mon) 23:26:02 ID:b0abe767


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高岡豊・溝渕正季訳・解説.2015.『ヒズブッラー : 抵抗と革命の思想』現代思潮新社.

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        / {:.:.: ―:.:.:.:.:.:.:/ : //|:.:|  '⌒:.:.八:|
.      (二八:.:.:.-| :.:.:.:.:// /'⌒ |:.ノ  仍うV:./ノ
.     {ニニニ|\:.:|/!:.:./|__笊示ミ    ヒツ {:/
.     {ニニニ|:.:Λ|人/ :| 〈 ヒツ        |       今回の参考文献はこちら、2000年代までのレバノン思想に関する
.      \ニ/|:/:.:{( 人:.:.\           人
         /:./:.:.:.|:.|>-\:.:.\     ' ´  ⌒`      ヒズブッラーの公開書簡、論文を全て翻訳し、しかも解説まで加えた名著です。
.     // /:.:.: 人|:.:.:.:.:.:.:.>- \ー―く \
.     /:.:.:. /:.:/:. 〈\_彡'´    )     ) _    レバノン・イスラエルを論じたい奴は、まずこれを最低読んでください…でないとお話になりません
  /:.:.:.:.:.://:/:.:.:.:{\__    ̄ ̄~^'   ̄  }‐┐||
 //:.:.:.:.:.:./:.:.:./: |:.:.:.{      ァ=-‐''~⌒\___ノrヘ:||
./ {:.:.:.:.:. /{ :.: |:.:.:|:.:.:八______ ,.イノ /      ∨/⌒ }          そういうレベルの基本文献といっていいでしょうね。
{ 八:.:.:.|人:.:.:. |:.:.:|/{. . ./  / /         {/⌒ 〉
   \(  \:.|:.:.:|  {. ./ /   {        ∨⌒i|
          人:.:|  {.//                } |  |i||
      /(  \ /Λ        }      } }  |i||
.     (  \ / / }        }       V}  |i||
.       \ /   / 〈      人       }   |i||

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989  名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/07/07(Mon) 23:29:00 ID:b0abe767

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図1レバノン宗教・宗派分布
ttps://imgur.com/a/oZgj1b6

ttps://brilliantmaps.com/lebanon-religion/ より引用
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               _ _
           ,....:::::´:::_ヽ::::_::::...、
         ,.:´,..::´::::::::::::::::::::::::::::`::ヽ、
          /:::/:::::::::::::::::::::::::/、::::::::::ヽ::ヽ
          ,::::/:,:::::,:::::::::/::/:/  ヽ::、:::::∨::.
     ,...---|:::|:/:::/:::::::/::/}/   }:∧:::::|::|:{
    {   ,.|:::{':::/::::/⌒/'    ⌒∨:}::|リ
    \,  |::r∨:::イィ斧ミ、   ィ斧ヽ}:,::/'
      乂 _;::{ Ⅵ:| Vり      Vリ 'イ|「
         /::乂ム:::}       '     ム}          ヒズブッラーを知るためにレバノン、レバノン内戦について解説しましょう
         ,:::/:::/:::}::|::.、    ,.,  イ:::|
      /::/:::/:::::j:/::::|>    イ::::l::∧         まず、ひとまずこのマップを見てください レバノンの宗教・宗派別居住地域地図です
       /::イ:::,::::::/ ̄ ̄ ̄ ̄`´ ヽ|:::/イ:::::ヽ
     /' /::::/ィ 乂┼╋┼╋┼╋}'≧- 、::::}       さあ、どう感じましたか?
      { {::::/∧  ヽ╋`¨¨¨╋┼╋ノ  Ⅵ
      | |:::{/  \  ` ー r----- ´   }'
      { |::::|    ヽ     |      ∨ |
      Ⅵ      l     |={_}=    }  |
       |     ,     |       ,:  |
       |      {     |        {
       |      |     |={_}=     }  |


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990  名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/07/07(Mon) 23:34:29 ID:b0abe767

          ,...::''"゚~ ̄~゚^' ̄~"'':...、
          /:.::.::/:.::.::.:.:/⌒:.::.::.::.:\
       /:.::.::.:/:.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::\
.      /:.::.::.:/:.::.::.:.: /::/:.::/:.::Λ:.::.::.::.::.:.: \
.    __ /:.::.::.:/:.::.::.:.: /::/:.::/:.::/ Λ::|:.::.::.::.::.::.:.::.
   {二√ :.:.: |:.::.:.:|::/|__|_,ノ  |::|:.::.::.:: |:.::.::.::.
   {二| :.::.::.: | :.: _|≫==x/:|/   |Λ:: | :.:|::|::| |
   {二| :.:.:/:.:|:.::.:Y _)(:.:「      二|⌒:.::|::||ノ
.    V/|:.:i"⌒|:.::.::| 乂ツ      ,ノ灯Y:|:.:.:|Λ|
    {//:八 |:.:.:|''        ヒソ ノΛ ノ  |
    {/:/:.:: \|:.:.:Λ      '    ''/::|:.:.:| ノ            この地図を見てどう思いましたか? 多分めんどくさっ!!
    /::/ :.::.:.: 人 :.::.::.:    , ,    八:|:.:.:|〉
.   /:.::.::.:/ :.::.::.:: \::ト       イ:.::.::|:.:.:|∧            この国ユーゴスラビアよりもモザイク国家じゃねえか!
  /:.::.::.:/ :.::.::.:.:|:.:.:| \, >  <:|:.::.:| :/ :|:.:.:|: ∧
. /:.::.::.:/ :.::.::.::.: |:.:.:|::|      乂|:.::.:|/:: Λ :| :: ∧          そう思ったことでしょう……まあ、なにせ18の宗派が公認されている国家ですからね
/:.::.::( ̄ ̄ }―|:.:.:|┴ .,_   r――‐/:.::/<:.::.::.::.:.: |
:.::.::.::└┐  \\|           /:.::/  )\:.:.: |          
:.::.::.:/ └┐  >‐┐    ┌<|:.:.:| 厂  Λ∨|




                 ______
            /:.:.:.:._:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\
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          //:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..
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       {    |--:|:.:.:.:.:.:. /:.:.:.:.:.:.: 人:.:.:Λ:.:.:.:.:.:|
       {    |:.:__|:.:.:.:.:.:/:.: /|/   |/ ̄|:.:.:.:. |
       .. ̄{__|「ヽ|:.:.:.:|/:.∠__    __|:.:.:.:. |
             |l  |:.:.:.:|  ̄∩     ∩ ̄ノ:.:.人|
             |:\NV:|   ∪     ∪ イ/             ここでは、ひとまずシーア派は南部(イスラエル国境)、東部(シリア国境)に多く
           八:.:.:|:.:.:.:.ヽ            j:〈
           ./:.:.:.: 人 :.:.:.:|          イ:.:.|             スンナ派は北部(トルコ国境)、東部(シリア国境)に多く
          /:.:.:.:.:.:.:.:.:\:.:|)  ≧=≦ :.:.: |:.:.:|
         ./:.:.:.: __/ {∨    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄〉       マロン派は中部、ドゥルーズ派は東部…とぐらいに覚えておいてください。
        /:.:.:./ : :: :{   \    /       p       /
      ./:.:.:./ :: :: ::l!    \ /      ( ̄)      /
      {:.:.:./ : :: :: ::{       /                /
       {:.:./: :: :: :: :弋、   ./                /
        |: 八:.|.: : : :. :. :. :.__/                /
        |/  \ /: :/: {  二 ノ        {  ̄\



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991  名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/07/07(Mon) 23:39:10 ID:b0abe767


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図2レバノンの宗派人口
ttps://imgur.com/a/PWQTtCZ
青山弘之.2008.「レバノンの政治制度、政治体制、政治構造―第二共和制を中心に―」
佐藤章編『政治変動下の発展途上国の政党』調査研究報告書 アジア経済研究所 22より引用

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                   ''^゚~ ̄ ̄~゚^''  、
              /:.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.:::\
              //:.::.::.:: /:.::/Λ:.::.::.::.::.::.::.::.::.:\
           /:.:/:.::.::.::.:::|:.:/   |:.::.::|:.::.::.::.::.::.::.: |_
            | :.::.::.::.::.::.: |::|  |:.:::|:.::.::.::.::| :.::: |:i:i:i\
            |::| :.: |::\:Λ|   \::\/:.:|:.:::|::|:i:i:i:i:i冫
            |::| :.: |::/|/\_     ,_/ \::|:.:::|::|\/
            |::| :.: |Y灯下ミ    灯下ミY|:.:Λ|i:i:i:\
            |/\::人 Vソ      Vソ ノ/:| ノ|:i:i:i:リ        では、もう少し具体的に、どの宗派がどれぐらいいたのかの統計を図2で確認を
.            乂 {|\| ''    ´     ''/|:.::.:| : | ̄
               /:.:八    ┌  ,    ノ:|:.::.:|:.:::',           注目すべきポイントは以下の3点でしょう。
.               |:.::.::|个:...        ..::个 |:.::.:|:.::.: ',
.               |:.::.::|:.::.::.::.::|>r< |:.::八:.::.::: | :.::.:: ',         ①マロン派、スンナ派、シーア派で常に7割以上を占めている
              Λ :.::|{Τ       \__::\ト|:.::.::.::.::',
               /  \|{ \_,.  ―┐| }\ノ:.::.::.::.::.:|         ②1932年時点でわずかにキリスト教徒が多かったのが、1990年代にはムスリム多数に
             /       />''´    ノノ_ノ  \:.::.::.::.:|
.          /         /       /⌒´     \:.::.:|         ③1932年以降なぜか国勢調査が実施されていない
         {         ∨    ,、丶゛       ∨   ∨ノ
        \    /   /             }    }



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992  名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/07/07(Mon) 23:44:58 ID:b0abe767


                    ____ __
              / ̄:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\:.:.:.\
              /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\:.:.:.\
.           / .:.:.:.:.:.:.:.: //|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\:.:.:.\
.         / .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./  |:.|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: \:.:.:.:.
        / .:| :.:.:.:.:.: / :|  |:.|\ :.:.:.:.:.:.:.:.:.: |:.:.:.:.: |:.:.:.:}――┐
         |: /|:.:.:.:.:. /|:.:.|  |/   \―|―:.:.|:.:.:.:.: |―‐〉ニニ|
         |:.|||:.:.:.:.|――        \|\:.:.|:.:.:.:.: |:.:.:.:|二二|       ①についてはレバノンがモザイク国家といえど、多数派を占めるのは3宗派
         |Λ|:.|:.:.:.||/      イ^丁⌒>Λ:.:Λ|― |\二│
         |  |Λ:.:.| イ^丁    Lノ    /∨:|:.:.:.:.:.|ニl\ノ        ②については、レバノンという国家は元々フランスの影響下で作られたときに
            \:|  Lノ       , ,  /:.:.:|:.:|:.:.:.:.:.|ニ|          あえて、キリスト教徒が多数になるように作られた人工国家の影響が出ていますね
              /:.:| , ,           /:.:.:. |:.:|:.:.:.:.:.|ニ|          そのため、当初はキリスト教優位になる仕組みだった国家です。
          /:.:.人     〈⌒ヽ     |:.:.:.:. |:.:|:.:.:.:.:.|⌒
            / :.:.: /|\         |:.:.:.:. |:.:|:.:.:.:.:.:l           ③については、②の前提となる人口構成が崩れたと予測されるにもかかわらず
.           ;.:.:.:.:/ :l:.:.:.\__     |:.Λ:ノ:.:|:.:.:.:.:.:.l           レバノンでは国勢調査はずっと行われていない。
         |Λ/  l:.:.:.:.:.:|:.:.:|:.|:.:|Y^Y^|/^7:.:.:|:.:.:.:.:.:.:l           国勢調査をすることはキリスト教優位を否定する行為だからですが……
             l:.:.:.:.:.:|:.:.:|r<X{__/X/⌒\:.:.:.:.:.:.:l 




                            -‐……‐
                        /:::::::::-‐…<::::::::::\
                           //:::::::::::::::::::::::::::\:::::::::\
                           /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
                       /:::::::/ ::::/ ::: / |:::::::::::::::::\|
                         |:::: / \::/:::/   |:::::::::::::|:::ニ|__
                         |:::::|笊㍉/  、__|_:::::: |::ニノ 〉
               __         \| Vソ    _ ノ::::::::::::/::/{/
.  ⊂ニニ⌒  ̄ ̄ ̄|   ⌒ ーへ ̄ 从   ,  てう㍉イ:/::::::Λ〉 /\       こうした人口構成そのものだけなら問題にはならなかったかもしれません
     Lとノ ̄  ―-只           |:::::\      ..:::/::|::::::::::|  / つし〉
               〈ノ∨  ̄ ̄ ̄\_  |::: Λ{\_   个/:::::|::::::::::|  |  ノ }       しかし、レバノンはこのような宗教・宗派人口に準じて
                          | V|::/  {    / | |:::::Λ:::::八 /  / 
                          |:::八{  \/  ノ |/  \:: /   /         政治的役職や議席を配分枠を定めていた「宗派国家」だった。
                      /      √ ̄   }<   ⌒/  /\_
                        /      ノc     / : \  〈 {    \::/⌒
                         {          / ::::::::::|\{\__ノ〉             これが大きな問題を引き起こします。
                     /{   |  \   Λ ::::::::::|::::::`ー<
                       /   |   \   \::: ノ\:::::::/ ̄\
                        |             \:::: }\{
                      |      |        \   \


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993  名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/07/07(Mon) 23:47:58 ID:b0abe767


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図3レバノンの議席配分
ttps://imgur.com/a/x7d85sK
末近浩太.2002.「レバノンの宗派制度体制とイスラーム政党:ヒズブッラーの闘争と国会選挙」
日本比較政治学会編『現代の宗教と政党:比較のなかのイスラーム』早稲田大学出版会, 182.より引用


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                /::.::.::.::.::.::.::-‐v‐-:. \
             / ::.::.:: /::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::\
             //::.::.::.::/::./::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::\
.          /二r=ニ ::/::./::.::.::/::.::.::. Λ ::|::.::|::.::.:
         〈ニ二[-=ニ:| : |::.::.:/::.::/|: /  斗::.:|::.::|::|
.           ∨二[ ::.::.::|:|::|::.:/}/`|/    jハ|::.::|::|
            ∨-| \>N::|::.:r'T灯ト    ィTY::.::.ハ|
             Lニ|::.::.:{ |八人 Vり    tりノ:/ 丿
            |::.: 人 ┤::ヽ      '  「\                   宗派体制の意味を如実に表すのが図3でしょう。
            |/::.: | >|::.::.:|     ,   人::.:|
                / ::.:: |::.::.:|::.::.:|>   _´ イ \::.:|                   これは全体の議席を キリスト教・イスラーム:6・5に分配し
            // ::.::.::.::. ノ/∨、   }\:|__  ∨          r…‐-ミ
              //::./ ̄|※    \__/   ※| // ̄ ̄ ̄ ̄~~゚"''<⌒  \     さらに、その内部で人口に応じて宗派ごとに議席の枠を完全に定めるわけです。
          //::.::|     ̄|※  /Λ\,厂 //:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. /:.:.:.:.:.:\\
            ///::.::|.      ̄|/|i:i:i:ic:i∨//:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. /:.:.:.:.:.:.:.:.///
        / :|::.::.:|          〈|i:i:i:i:i:i:i:i//:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:(\ /:.:.:.:.:.:.:.:.///
         {   |::.::.:|      |  [|i:i:i:i_/┐:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. : :\\:.:.:.:.:.:. //
          |::.::.:|  丶  |  〈|i:///:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. /⌒  |:.:.:.:.: //
            ::.::.:|    \|  [|i:|    ̄|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. {_   |:.:.:.:./
             \|   \_)   〈|i:|   /(ノ| ̄| ̄~゚"'' 、 /\ ノ\/
               |   ―┴―‐┬   |i:ci:|  | ̄ ̄( ̄ |  /
               |       く※ |_ノ:i:i:iノ__,ノ    > ∨
               人       >XLノ ̄ ̄ ̄\___/
                `¨7¨¨¨¨¨¨¨´       \
                    ′  {       \_    >――-
                  ;   {       \         __>┐
                  |                   /※厂  ̄ヽ
                  |                   /※厂  |    |
               /人                 /※厂   |     厂


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994  名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/07/07(Mon) 23:53:18 ID:b0abe767



              -―-
          //:..:..:..:..:..:..:..:\
        _ /::/:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..丶
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.         {ニニ|:ト| :..|x=ミ/   ノ⌒|:..::|
.       ∨//::VΛtり `  x==ミ::ノ
.         〈ニ/:..:|:..:..:|''     ⌒イノ               さらに、議席だけありません。大統領、首相、議長はレバノンの憲法で
        /:..:: |:..:..:ト  ` _ノ^〉ヽ
.      //::/V人|  T/ ┌‐┘:..|               どの宗派が就くかが明確になっており、その他大臣も慣習ながらある程度の傾向が定まっていました
    / /:..|二二\//|_|ニニ∨
   /  /:..: |ニニニ(__/[ ̄ ̄]ニ|                ここまで見れば分かると思いますが……
     /:..:: Λニニ∨二 |ニニ|二|
.    ∨ :..:..:: Λニニ∨__.|/ ̄Τ⌒\ _|
      |:..:..:..:..:: Λニニニニニ 厂\  |  ´ - _
      |∨\:../ Λニニ厂 ̄ ∨   リ」    --―┐       1990年代までのレバノンは、圧倒的にマロン派含めたキリスト教の権限が強い国家だった
---==ニニニ/┼┼/    |     |┤i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i|
i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i|┼‐/| /     |     |┤i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i|        それは議会の上でも、行政の上でもです。
i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i|┼/‐| |   Λ   |┤i:ニ==-- ┴ _
.___ 二ニニ==-|‐/┼| |   / |    |┤         _´ - _
.          |/┼lノ |  ./ーく|    |┘==ニ二i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i
==ニニニ二└―<┼|  |ー┼|   /:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:
i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i ̄|  |  ̄ |  〈:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:
i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i|乂_,ノ、 Λ__ノ|:i:i:i:i:iニニ==---     ̄
i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:iニ==--| ニニ V 二二|
==--         \ニニ{ ニニノ

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※憲法上の規定
大統領=マロン派 政治的役割が大きい
首相=スンナ派  政治的役割がやや小さいが行政的役割はある
国会議長=シーア派 名誉職 政治に影響を及ぼしにくい

※慣習としての傾向
外務大臣・教育大臣=マロン派、ギリシャ正教、ギリシャカトリックのいずれか
国防大臣=ドゥルーズ派
内務大臣、財務大臣=スンナ派

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995  名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/07/07(Mon) 23:59:45 ID:b0abe767


                               ___
                               ''^~ ̄::.::.::.:´"''::.:´"'::...,
                        /::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.\::.::.\
                         /::.::.::.::.::.::.:: /|::.::.::.::.::.::.::.::.::\::.::.',
                     /::.::/::.::.::.::.::. /  |::|::.::.::.::.::.::.::.::.::.::':,::.:',
                       /::.::/::./::.::.::.::/   .|::| ::.: |::.::.::.::.::.::.::.::'::.::'
                    ::.::.::.: /_Λ/   |人_|_::.::.::.::.::.::.|\|
                    |::.|::.::|::.:|/ ̄`    ´  |人::.:: |::.::.::.:|二| ̄\
                    |:人::.::.ィ灯)心    ィ灯)下\|::.: :ト|/「  /
       _                 \::.: 乂ツ      乂ツノ 八八|Y::.::厂∨        さて、ここまでの図1~3まで論じた上で言える レバノンの宗派体制
      {i:i:i:i,              _ノ::} '''  '        ''/ ::.::/  }::./\ノ
      ∨i:i:i,           ⌒>::.::.::.{           /::.::.::.:/ヒソ:/|           その問題は明確でしょう。
.      ∨i:i:i,          /::.::.::/\   └ '   /::.::./:.ノ:: |::.::.::.|
.       く∨i:i:i,厂|         {/:/::.::.::.:个: .    斗::/ ̄ :|::.::| ::. 八
          厂つi, |         Χ::.::.::./::.:ノ::.:{辷辷<|/ ̄}::.::.:|::.::|::.::.::.::.\
.         〈厂つi:i:, \     /::.::.::.: ;斗ー辷;′;辷「   ̄ ̄~^'く::.::.::.:\::.::\         1932年の国勢調査によって定められた議会・行政の構成は
         〈  Vi:i:i:)  }― /::.::.::.::./  辷;′;辷「        ∨::.|::.::.\::.::\
.         \    ノ::.::.::.::.::.::.::.:/''^゚~~辷;′;辷「~゚厂~^'Y      |::.::|::.::.::.::.::.::.::.:}       明らかにムスリム人口が増えている以上、根拠が破綻している
          /|  ∨::.::.::.::.::.::./ / r辷′;辷「  |    {   _  -=ニニニ- _::.::.::.:ノ\
        /::.::.|    V::.::.::.::.:/| | r辷′ 辷[ ┌、 _  -ニニニニニニニニニニ\::.::.::.::.}     にも、関わらず、この宗派体制の配分は1992年までなされていなかった。
.        {/::.|     ∨::.::/ | | r辷  ニノ)-┤ |ニニニニニニニニニニニニニニニ\::.ノ
        /::.::.::| / ̄ ̄}    | | r辷 -||( 二| |ニニ/⌒〉ニニニニニニニニニニニ\
         {::.:/〈    /'     |, -ニニニニ|| \ノ  \/  /ニニニニニニニニニニニニニ}
        ∨  ∨        八二ニニニ└\       /ニニニニニニニニニニニニニノ
            {      {_\ニニニニニニニ\    ノ >ニニニニニニニニニニニ-
               \__ _/ {_ ,. \ニニニニニニニ> (C)   ̄}⌒\ニニ‐
                  /    \ニニニニニニニニニ\ _ノ   }
                     /   /     ‐‐ニニニニ‐‐  {      ノ






                                 ''^~ ̄ ̄ ̄~゚^'' 、
                         / ̄ :.:.:.:.:.:. ̄ ̄~^'':.:.:.:.: \-=ニニ\
                         / :/ :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\:.:.:\ニニニ}
                            /:.:.:/:.:.:.:.:.:. / Λ :.: |:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. \:.: Vニニ.}
                        /:.:.:/:.:.:.:.:.:. /   | :.:.| :.:.:.:.:.: |:.:.:.:.:.:.\:Vニ/
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                      /: |:.:.:|:.:.:.:.| :.: |   |/斗―\: |:.:.:.:.:.:Λ|:.|-Λ
                        /:.|:.|:.:.:|:.:.:.''^~ ̄       ィ rぅT^Y:.:.:.: | :.:. |二Λ
                         { |Λ:.:.:.:.:.Y^ ノうY      乂ツ ,ノ:.:.Λ| Y :|二二〉
                      |  V\人 乂ツ       /イ|/: |.ノリ:.:「  ̄                  つまり、人口構成が少なくなる抵抗するキリスト教徒
                          /:.ノ\{    ´         ノ:.:.:. |イ:.:.:|     rへヘヘ_ 
            _______/:./ :.:.Λ    V   )  /:.:.:.:. /:.:.:.:. |     ./:.:.:.}     |^}         人口構成が多くなり権限を求めるムスリム
         /⌒>:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. : イ :.:.:. / :仝:..      /:.:.:.:.:.:.:/ :.:.:.:.: |    /:.:.:.: }     }\
            /:._:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: | :/∨:.:.:.:|:.:.:.:.:.:ニ=-< |/|: //:.:.:.:.:.:.:.:|   ./ :. | ̄\_ /:.:.:.:.:\      そういう構図が出来ていたといえましょう
          /:/ /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: |/:.:.:.:.:.:. ノ :.:.:.Λ∨Λ   |/^~ ̄~^'<:.: |  /:.:.:.:.|     >:.:.:.:.:.:.:/
           { /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: /´辷―{ ̄>{」< ̄}―辷     \. /:.:.:.: /    /:.:.:.:.:.:/
. //〉       /:.:.:.:.:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/ /[// / /|\辷┘       /:.:.:.: /    :.:.:.:.:.:.:/
///| /〉   |:. /:.:.:.:.:.:. /|:.:.:.:.:/  /   └辷 / / l | 辷┘   \    \:.:./     /|:.:.:./       この構図が、1975年からのレバノン内戦の原因になります
〈  |/ / \_  |:.:/ :.:.:.:.:.:.: /  |:.:/   |     └辷―辷┘      \   ,//       |/
. \  {   \ ̄>―――<⌒\     |                    /:.:.:.:\  ´       |
   \  ̄`ヽ}                   /|               /:.:/|:.:/\
    \_/                /:.:.:.|                //  }/   \__/
        |__ / ̄    ―――< \{\|                 〉  /
                        〈                  /
                            _ノ              〉


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996  名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/07/08(Tue) 00:06:45 ID:b76c76be


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レバノン内戦の原因まとめ
→レバノンはモザイク状の宗教・宗派が存在しており、しかもかつてはキリスト教徒が一応の多数だったのがムスリムが多数になっていた
 これに1970年代にヨルダンから追放されたPLO+パレスチナ難民が流入。政府は彼らに事実上の自治とイスラエルへの越境攻撃を許可する
 その中で、イスラエルの介入や、宗派バランスを崩れることを恐れて発生したのがレバノン内戦(1975~)


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            |::.:八::.::.::.|::抖羔ミ     ィf笊人/
            |::.{  \:N(  |___ノ     └┘イ: |          さらに、もう1つレバノン内戦に至る過程として
            |::.::\|::.::.|〉        '    八::|
         八::.::|:|::.::.込     , 、  イ ::.: |          パレスチナ解放を掲げるPLOがヨルダンから追放され、レバノンにスンナ派のパレスチナ人が
.         /::.::.::. |:|::.::.|::.|::≧       <::.|::.::.::|
        / ::.::.::.: |:|::.::.|⌒ソ      | ̄\|::.::.::|          かなり流入してきたため、レバノン政府がびびって彼らに特権を与えてしまったこともあります。
.          ::.::.::.:/ ̄|::.::.| 「         Υ  |::.::.::| `ヽ
          |::.::.::   八 :|\___ /  人::.::.|  |          このことは宗派バランスをムスリム側に大きく寄せつつ
          |::.::.:|    \  \         \|  Λ
          |::.厂\   \     __/      /:::::〉         しかも、イスラエルからの攻撃理由を作ってしまったという意味で悪手でした。


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997  名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/07/08(Tue) 00:14:22 ID:b76c76be


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※レバノン内戦の段階

第一段階:1975~1977年 キリスト教徒VSパレスチナ人+アラブ民族主義ムスリム
→シリアによる介入 アラブ連盟による平和維持部隊

第二段階:1977~1982年 イスラエルのレバノン侵攻
→パレスチナ解放機構によるイスラエル攻撃やテロ/イスラエル軍の反撃・侵攻
→イスラエル軍による国境19km地帯が安全地域として確保+キリスト教支援+パレスチナ人への攻撃

第三段階:1982~1984年 レバノン戦争 ※ヒズブッラーの登場時代
→マロン派の指導者・民兵の黙認の元 レバノン国境から40km侵攻 PLOの拠点含めたベイルート攻撃
→シーア派民兵がレバノン軍および多国籍軍に攻撃し、打撃を与える
→国連の介入によりPLOおよびイスラエル軍の撤退確認

第四段階:1984~1990年 解放戦争と内戦の終結
→シーア派民兵同士の対決 ヒズブッラーが主導権を握る
→イラクによる支援を受けたマロン派とレバノン軍による各民兵の攻撃(解放戦争)。マロン派の敗北と指導者の国外亡命
→ターイフ合意 議席配分や各閣僚などの権限変更をムスリム有利(6:5→5:5)に変更

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       [二二|:ミ|::|::|:.::/:.::.:.: /     \|:.:|:.::.:|
       [二二|:ミ|::|::|:.:‐‐--/    -‐‐::|:.::.:|
         ̄/|:.: |ΛVxf庁末     末ミト Λ|
.      くニ/|:Y^|: 人 V;;り    Vりノ:Λ           ここでは、レバノン内戦に多くを語ることはできません。
.        /:|人_|:.::.:|       ,    {:.:.: |
       /:: |:.:.:人:.::|     _   人:.:.:|           ただ、簡単に説明すると、段階として内戦は4つの段階に分かれます。
.      /:.:: 「 ̄ ̄\:r‐i^i^i^L <::|:.:ノ::ノ
      ,::.:.:::/     | ̄UUUU ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|          第一に、1975~1977年にムスリムVSキリスト教の内戦があり、シリアの介入で一次的に鎮静
       | .:.: Τ\__|              |
       |Λ:/    /|              |          第二に、1977~1982年にPLO打倒のためにイスラエルがレバノン侵攻を実施し、
         V/ / |              |          レバノン領土の一部支配、傀儡政権の樹立、キリスト教徒の支援……
.        //    ,|_____nmn__|          
        {       /     }{  └‐┬┘


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998  名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/07/08(Tue) 00:17:52 ID:b76c76be


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※レバノン内戦の段階

第一段階:1975~1977年 キリスト教徒VSパレスチナ人+アラブ民族主義ムスリム
→シリアによる介入 アラブ連盟による平和維持部隊

第二段階:1977~1982年 イスラエルのレバノン侵攻
→パレスチナ解放機構によるイスラエル攻撃やテロ/イスラエル軍の反撃・侵攻
→イスラエル軍による国境19km地帯が安全地域として確保+キリスト教支援+パレスチナ人への攻撃

第三段階:1982~1984年 レバノン戦争 ※ヒズブッラーの登場時代
→マロン派の指導者・民兵の黙認の元 レバノン国境から40km侵攻 PLOの拠点含めたベイルート攻撃
→シーア派民兵がレバノン軍および多国籍軍に攻撃し、打撃を与える
→国連の介入によりPLOおよびイスラエル軍の撤退確認

第四段階:1984~1990年 解放戦争と内戦の終結
→シーア派民兵同士の対決 ヒズブッラーが主導権を握る
→イラクによる支援を受けたマロン派とレバノン軍による各民兵の攻撃(解放戦争)。マロン派の敗北と指導者の国外亡命
→ターイフ合意 議席配分や各閣僚などの権限変更をムスリム有利(6:5→5:5)に変更
 ヒズブッラーは唯一武装組織を解散せず存続が認められる

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                   ''^゚~ ̄ ̄~゚^''  、
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            |/\::人 Vソ      Vソ ノ/:| ノ|:i:i:i:リ
.            乂 {|\| ''    ´     ''/|:.::.:| : | ̄
               /:.:八    ┌  ,    ノ:|:.::.:|:.:::',         第三に、イスラエルとマロン派の協力、それに対するシーア派ムスリムの抵抗
.               |:.::.::|个:...        ..::个 |:.::.:|:.::.: ',        イスラエルとPLOがレバノンから消滅 ここでヒズブッラーが生まれ……
.               |:.::.::|:.::.::.::.::|>r< |:.::八:.::.::: | :.::.:: ', 
              Λ :.::|{Τ       \__::\ト|:.::.::.::.::',       第四に、シーア派ムスリム同士の主導権争い そしてキリスト教徒とムスリムの最終戦争
               /  \|{ \_,.  ―┐| }\ノ:.::.::.::.::.:|       結果として、ムスリムとキリスト教徒が対等になる宗派体制への修正
             /       />''´    ノノ_ノ  \:.::.::.::.:|
.          /         /       /⌒´     \:.::.:|       そして、ヒズブッラーがレバノン唯一の武装組織かつ政党として生き残る。
         {         ∨    ,、丶゛       ∨   ∨ノ       そういう流れになっています。
        \    /   /             }    }

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999  名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/07/08(Tue) 00:31:44 ID:b76c76be


                     -―――-
                /::.::.::.::.::.::.::-‐v‐-:. \
             / ::.::.:: /::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::\
             //::.::.::.::/::./::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::\
.          /二r=ニ ::/::./::.::.::/::.::.::. Λ ::|::.::|::.::.:
         〈ニ二[-=ニ:| : |::.::.:/::.::/|: /  斗::.:|::.::|::|
.           ∨二[ ::.::.::|:|::|::.:/}/`|/    jハ|::.::|::|
            ∨-| \>N::|::.:r'T灯ト    ィTY::.::.ハ|
             Lニ|::.::.:{ |八人 Vり    tりノ:/ 丿
            |::.: 人 ┤::ヽ      '  「\                さて、ここで重要なのは、ヒズブッラーという組織が
            |/::.: | >|::.::.:|     ,   人::.:|
                / ::.:: |::.::.:|::.::.:|>   _´ イ \::.:|                レバノン内戦の中でも、イスラエルの侵攻がもっとも激しい時期
            // ::.::.::.::. ノ/∨、   }\:|__  ∨          r…‐-ミ
              //::./ ̄|※    \__/   ※| // ̄ ̄ ̄ ̄~~゚"''<⌒  \  その時期に生まれたという組織ということです。
          //::.::|     ̄|※  /Λ\,厂 //:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. /:.:.:.:.:.:\\
            ///::.::|.      ̄|/|i:i:i:ic:i∨//:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. /:.:.:.:.:.:.:.:.///
        / :|::.::.:|          〈|i:i:i:i:i:i:i:i//:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:(\ /:.:.:.:.:.:.:.:.///      政府やそれを支援する欧米諸国と敵対していたイラク、イランと違って
         {   |::.::.:|      |  [|i:i:i:i_/┐:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. : :\\:.:.:.:.:.:. //
          |::.::.:|  丶  |  〈|i:///:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. /⌒  |:.:.:.:.: //        明確な外国の侵略者がいた この事実がヒズブッラーにとって
            ::.::.:|    \|  [|i:|    ̄|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. {_   |:.:.:.:./
             \|   \_)   〈|i:|   /(ノ| ̄| ̄~゚"'' 、 /\ ノ\/          極めて重要な事実となるわけです。
               |   ―┴―‐┬   |i:ci:|  | ̄ ̄( ̄ |  /
               |       く※ |_ノ:i:i:iノ__,ノ    > ∨
               人       >XLノ ̄ ̄ ̄\___/
                `¨7¨¨¨¨¨¨¨´       \
                    ′  {       \_    >――-
                  ;   {       \         __>┐
                  |                   /※厂  ̄ヽ
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1000  名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/07/08(Tue) 00:34:46 ID:b76c76be



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           ∨ー/::::|:::: |::/=={   ノ⌒: |         _、 ''゛     {  {  〔__/             ではヒズブッラーとは何か?
             |::::: |:〈(|人乂 tリ    =ミ:::ノ|  ___、 ''゛        {_{  ̄
             |::::: |:Λ|::::::|      、tリノ::::ノ/_、 ''゛       _、 ''゛                   簡単にまとめると、以下のような組織ということになります。
             |::::: | ::: |::::::|   {__ノ  }ノ/         _、 ''゛
            /:::::::|:::::ノ__,ノ>     イ/__}    / _、 ''゛
          /::::::::/:::: /:: }/只___//厂    /_、 ''゛
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レバノン内戦のさなかに、イラン・イスラーム革命の影響を受けたシーア派のウラマーや民兵が、
イスラエルのレバノン侵攻に対抗するために結成した組織
目的として、イスラーム原理に忠実、イスラエルに対する抵抗雲合を最優先、イランの最高指導者の指導下にあること

当時の駐シリアイラン大使や、シリア政府による資金的・軍事的支援を受けて具体化
レバノンに駐在する米仏軍やイスラエル軍に対する殉教作戦や誘拐事件を起こして有名に

内戦終結後も唯一民兵組織を維持しつつ、選挙に参加して対イスラエルを標榜。

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