やる夫で学ぶ「法学者の統治論」
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名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2024/08/31(Sat) 01:20:23 ID:1e92ac9d
∩_
〈〈〈 ヽ
____. 〈⊃ }
/ \ | |
/ ヽ、 _ノ \ ! ! ん?これ……もしかして、シャリアーティの話のパクリじゃry
/ (●) (●) \| l
| U (__人__) .| /
\ |i||||||i| //
/ __` ー' /
(___) /
.r-、 / ̄ ̄\
/て ) / _ノ \
( _ノ フ. | ( ●)(●)
ゝ、 〈 | u. (__人__) 一応、フーコーはシャリアーティには言及していない。いや確証は持てないけど
/ ハ ヽ. | ` ⌒´ノ
/〃 ヘ \ . | } ただ、一応イランの民衆の姿をつぶさに見た当時の外国人の目からも
i ! \ ` ーヽ }
丶丶 _ > ヽ ノ、 民衆が、イスラームを活用して、自己変革を成し遂げていると見えたらしい。
ゝ'´- 、_ y-、 \
〈  ̄ う /、 ヽ
`ー― ¬、__ノ | > / ちなみに、これは1978年の話だ。
| r'^ヽ'´ _/
| `く__ノ´
.
663
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2024/08/31(Sat) 01:27:15 ID:1e92ac9d
__
/ノ ヽ\
/ (─)(─)\
| u (__人__) | シャリアーティ自身は1977年に死亡し、ホメイニーが決定的な場面で登板することになる
| `⌒ ´ |
| | だけど、それを支える民衆は、シャリアーティの活動によって革命を準備した
| |
ヽ / そういう意味で重要……ってことなんだろうな
ヽ /
☆ / \
ボキボキッ \/ ト ィ ヽ
( ( 〈 | | 〉
____
/ \
/ _ノ ヽ__ \
/ ( ●) ( ●) \ そういう意味なら確かにそうかも
| u (__人__) |
\ `⌒ ´ / そして、そのシャリアーティの思想の影響を受けた人が 50代以上
/ u /´ __) \
| 、___/ /´ |/ 国の中枢を握っている世代なら、そうかも
|\________/ |
} |
.
664
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2024/08/31(Sat) 01:33:33 ID:1e92ac9d
. '´ ̄ ̄\
/ \
{ -― \
ヽ ,/ (●) ヽ そう考えると、今のイランにおける女性のヒジャーブ問題などもおもしろいな
ヽ(●) ⌒) トミ、
\(__厂´ } \ メモによれば、こんな言葉を残しているらしい
\ ⊂ヽ∩ }
|>-(,_,_/__/}
| ∧ j
ゝ--へ、___ハ
\_,ヘ \
{_/^`ー'
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
シャリアーティの宗教論 著作「ムハンマドの顔」p54より
もし、政府の宗教と政治のバランスが逸脱――極端な世俗主義、精神的な宗教主義に向かえば
必ず、元に戻ろうとする力が働くする、それこそがイデオロギーとしての宗教、革命的イスラームである。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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665
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2024/08/31(Sat) 01:38:15 ID:1e92ac9d
_____
. / ― \
./ノ (● ) \ これって自分が死んでも、イランというのは常にバランスを取るために
| (● ) ⌒) |
| (__ノ ̄ / 革命をするっていうメカニズムがあるってコト…!?
| /
\_ _ノ\
/´ |
| / |
/ ̄ ̄\
/ _,.ノ ヽ、_
| ( ○) (○)
| U (___人__) なかなか、恐ろしい預言だな。1971年に書かれた著作の記述らしいが
.| __ノ__
| _/ ___\ヽ_ 世俗的な体制だけでなく、過度な宗教体制にも警鐘を鳴らしているな。
、 '-/____ヽ |
ノ 、 ._'-〈 、ヽ | シャリアーティの考える革命論は、時代を超えた普遍性を持つのも特徴かもな。
,´ ヽノ} |
/ { / どのような体制にも鉄槌を加えることができる論理を持っているという点でな
./ / / { ってわけで長くなったが、まとめにはいろうか。
.
666
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2024/08/31(Sat) 01:47:53 ID:1e92ac9d
まとめ
①アリー・シャリーアティとは20世紀のイランを代表する社会学者・思想家
イスラーム、反帝国、西洋を上手く接合して、民衆中心の革命理論を打ち立てた。
②シャリーアティは、イランに生まれイランの学生時代、フランス留学時代を通じて、政治活動にコミット
西洋的な思想の影響も受けつつ活動したが、1977年に死亡。
③シャリーアティは、西洋自由主義や帝国主義の問題点から現在の状況を説明し
平等性を強調するためにイスラームの本旨に帰れと主張。
④そのために、教育を受けた近代的なイスラーム知識人「ロウシャンフェクル」の役割に期待しつつ
民衆の自己覚醒「革命的自己形成」こそが革命の第一歩とした。
⑤シャリーアティは死亡したものの、その思想的影響力は消えたとは言い切れない。
むしろ、現行のイラン・イスラーム共和国体制への批判理論ともなりうる存在。
⑥ホメイニーの法学者の統治論は、如何にアッラーの代理としての法学者による統治とそれに至る革命論を正当化したが
シャリーアティは、民衆を重要視し、かれらを革命に動員するための理論を作り上げたという違いがある。
/ ̄ ̄\
_ノ ヽ、 \
____ (●)(● ) l
. / \. (__人_) | というわけで、こんな感じだな
. / ― ―\. ヽ⌒ ´ l
/ (●) (●) \ { / かなり議論自体は混雑しているが、要旨をまとめると
. | (__人__) | ヽ /
\. ` ⌒´ /. / `ヽ 民衆を覚醒させる!それが革命の基礎段階だ!ってことだな
> <. /. <⌒ <)))\ l
/ /(((> ⌒> l ヽ_ヽ、___ ,イ
l. ___/_ノ. , ─l. |- 、 正直ホメイニーの議論よりは好感が持てるんだな
. l. ー‐⌒ヽ⌒ヽ l /⌒ ̄ ̄ ̄ l
ヽ、. |_ノ `/ , ─―──´
 ̄ ̄ ̄`ー ′ `ー ′
.
667
名前:普通のやる夫さん[sage] 投稿日:2024/08/31(Sat) 01:48:41 ID:034bf7d1
なるほど・・・
668
名前:普通のやる夫さん[sage] 投稿日:2024/08/31(Sat) 01:49:53 ID:230a63c7
常に市民革命の余地を維持することで権力の硬直化を防ぐという感じかな
669
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2024/08/31(Sat) 01:56:51 ID:1e92ac9d
/ ̄ ̄\
/ ─ ─\
| ( ●)(●) ___ シャリーアティを理解するには、シーア派のイスラーム主義、リベラリズム、現象学
. | U (__人__) / \
| |r┬-| /─ ─ .\ 実存主義、マルクス主義、ポスト・モダニズム、ポスト・コロニアルなど
. | `ー'´} \ / (●) (●) \
. ヽ } \ ...| (__人__) | 結構いろいろな議論を考えないといけないことがある。
ヽ ノ \ \ ` ⌒´ _/
/ く. \ \ ノ \ それに、彼の著作が多すぎて、全て把握するのが難しいね>
| \ \ (⌒二 |
| |ヽ、二⌒)、 \ | | まあ、とにかく何点から参考文献みて、さらって見るぐらいで良いと思うお>
.
670
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2024/08/31(Sat) 02:05:49 ID:1e92ac9d
Dr. Ali Shariati ttps://www.shariati.com/kotob.html
シャリーアティーに関するHP。彼の一部の著作や講演などが無料で しかも英語で閲覧可能というありがたみ。
The Official WebSite of Dr Ali Shariati ttp://drshariati.org/
シャリーアティーの公式文化財団。ペルシャ語だけど、彼の著作のみならず、様々なデータがアーカイブ化。
このサイトを使わずして、シャリーアティ研究を名乗ってはいけない。
シャリーアティー,アリー.1997.イスラーム再構築の思想―新たな社会へのまなざし.桜井秀子訳, 大村書店.
シャリーアティーの講義集。黒田壽郎による解説もついており、シャリアーティ思想に触れるならまず1冊目として。
/ ̄ ̄\
/ _,ノ `⌒
| ( ●) (●)
.| (___人__) さて、まずはシャリーアティーとはなんぞやと調べるためには
| ノ
.| | 上記2サイトを使うのが良いだろう。ただ、現状翻訳サイトにも限界があって何書いているのかわからないこともある
人 丿
/⌒ \ __ _ / そのために、日本語でというなら 桜井秀子訳の奴が良いだろう。
/ \
./ 人 ./ ヽ
〈 < / \ \
.
671
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2024/08/31(Sat) 02:08:11 ID:1e92ac9d
黒田壽郎.1980.『イスラームの心』中公新書.
――.1980.「イラン革命の哲学(一):アリー・シャリーアティーのイスラーム再解釈の試み」『現代思想』8巻 2号: 176-187.
日本で始めてのシャリアーティ思想の紹介
桜井秀子.2012.「イスラーム的な自己形成──アリー・シャリーアティーのナースの思想──」.『中央大学政策文化総合研究所年報』 第16号: 69-84.
民衆という点からシャリーアティー思想を踏まえて論考
永井晋.2016.「世界哲学構築における<イラン>という視座(パースペクティヴ)」.『国際哲学研究』5号 23-27.
講演録。シャリーアティー思想にも一部言及
羽山賢一.1985.「アリー・シャリーアティーにおける「ロウシャンフェクル」 : (イスラーム知識人)の理念とイラン・イスラーム革命」.『国際大学中東研究所紀要』 1号: 49-82.
シャリーアティー思想とイラン革命にに関してもっともまとまった論考
村山木乃実.2018.「アリー・シャリーアティー(1933-1977)の『沙漠』Kavir の分析:「書くこと」の意味合いに着目して」『言語・地域文化研究』第24号:35-52.
シャリーアティーの文学的側面に着目
____
/⌒ ⌒\ ホジホジ
.. /( ●) (●)\
/::::::⌒(__人__)⌒:::::\ そこら辺の基礎を抑えた上で、じゃあシャリーアティー思想ってなんだろ?
| mj |ー'´ |
\ 〈__ノ / と気になったら、このあたりから 日本語でも色々研究がされているのがよくわかると思うお
.. ノ ノ
.
672
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2024/08/31(Sat) 02:11:23 ID:1e92ac9d
Abdollah Vakily. “Ali Shariati and the mystical tradition of Islam”. available at:
ttp://digitool.library.mcgill.ca/R/-?func=dbin-jump-full&object_id=60680&silo_library=GEN01
スーフィズムとの関連からの研究
Ali Rahnema. An Islamic Utopian: A Political Biography of Ali Shari'ati. 3rd ed, New York : I.B. Tauris, 2014.
個人史から見た研究
Mehrazad Boroujerdi, Iranian Intellectuals and the West: the Tormented Triumph of Nativism, New York ; U niv Press,1996.
宗教的知識人としてのシャリーアティー研究
Hamid Enayat, Modern Islamic Political Thought, London : I.B. Tauris, 1982.
近代政治哲学としてのシャリーアティー
Hamid Alger, Roots of the Islamic Revolution in Iran, London : Open Press, 1983.
イスラーム革命のルーツとしてのシャリーアティー
Ervand Abrahamian.1982.Iran Between Two Revolutions, Princeton : Princeton UNIV PUPRESSUNIV P.
シャリーアティーとシーア派思想について
Shahrough Akhavi.1983. “Shariati's Social Thought” in Nikki R Keddie (ed), Religion and Politics in Iran: Shi'ism fromQuietism to Revolution, New Haven : Yale Univ Press,125?44.
イラン革命におけるシャリーアティーについて
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ●)(●)
.| (__人__)_ 日本語じゃ飽き足らないって人はこのあたりの英語文献が良いんじゃねえかな
| `⌒´. ̄
.| ノ 40年以上前の思想家だから、現状流行りのテーマとは言えなくて、1980年代の資料が中心的だけどな
ヽ .,ノ )/´二⊃
> /"/ '‐、ニ⊃ キンッ ただ、当時の西洋の人々が、イランイスラーム革命をどう考えていたかっていう傍証にはなるかも
./⌒ヽ l ´ヽ〉〆ヽ
( ヽ/ __人〉ヾ_ノ,ゞ
.\ / / { /
.
673
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2024/08/31(Sat) 02:16:02 ID:1e92ac9d
/ ̄ ̄\
/ _ノ ヽ、_ \ . ____
.. | ( ●)(● ) | / \ というわけで、今回はここまでだな
. . | (__人__) │ / ─ ─ .\
| `⌒ ´ | / (●) (●) \ 4話から続いてきたイランの話は今回で終わりで
. | | | (__人__) .|
. ヽ / \ ` ⌒´ / 次回からはイラク編だ
ヽ / > く.
/ く.[ニニニニニニニニニニニニ`.ニニ´ニニ]ゝ ヽ
| ヽ、二/ 〈〉 〈〉 ヽ__,ノ l ホメイニーに並ぶ理論家として有名な バーキル・サドルの「法学者の政治指導論」だね>
. | / 〈〉 ヽ |
| / 〈〉 〈〉 〈〉 ヽ / 今回のシャリアーティーともホメイニーとも違う議論を楽しめること期待しているよ!>
ヽ、_ヾ-‐‐--‐‐--‐‐--‐‐--‐‐--‐‐--‐ゞ___/
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674
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2024/08/31(Sat) 02:17:59 ID:1e92ac9d
というわけで、今回の投下はここまでになります。
長々と準備もせず投下して申し訳ないです。ありがとうございました。
質問等はいつでも受け付けます。次の投下は9月以内にできればなと思います。
あと、申し訳ないですが、シャリーアティーの表記ブレがひどいですね……
正しくは「シャリーアティー」ですので、皆様の脳内で変換してもらえると助かります。
675
名前:普通のやる夫さん[sage] 投稿日:2024/08/31(Sat) 02:25:55 ID:230a63c7
乙
ドタバタのフランス留学で得た市民革命成分がにじみ出てるように感じた
676
名前:普通のやる夫さん[sage] 投稿日:2024/08/31(Sat) 02:37:25 ID:8cbb90c3
乙
677
名前:普通のやる夫さん[sage] 投稿日:2024/08/31(Sat) 06:51:18 ID:47b64d76
乙
こんな人もいたのか1つ賢くなれたわ
678
名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2024/08/31(Sat) 14:26:12 ID:73ce03a5
>>675
本編でも少し触れましたが、彼は批判的に西洋の学問を吸収してきたわけです。
具体的には以下の3つの学問領域が革命思想に影響を与えたと言えるでしょうか。
第一に、当時のフランスの社会学です。実証主義が特に影響を与えたようですが、彼はこれを批判します。
なぜならば、当時の社会学は西洋が西洋を見るための学問であり、第三世界を見るための学問ではないからだと。
さらに、彼は社会学でありがちな、観察者・分析者の中立というのも批判的です。
社会学のような科学は、社会にコミットメントして初めて意味があるのであり、傍観者ではなんの意味もない学問だと切り捨てるわけです。
それゆえに、学者=知識人というものは、中立を捨てて社会参画すべきという方向になるわけです。
第二に、より影響を強く受けたのは、ポスト・コロニアル理論でしょう。
留学当時、アルジェリア独立戦争の真っ只中。その思想的イデオローグであるフランツ・ファノンの著作を読みこんでいたようです。
欧米の帝国主義が、世界の人々を苦しめたことを自覚し、その欧米と決別する重要性を理解したと思われます。
ただし、ファノンが欧米の影響から脱するために、植民地者に対する暴力の権利を正当化したのに対して、
シャリーアティーはそれを否定して、自己の内面からの改革をすることが欧米からの影響離脱に繋がると考えたという違いがあります。
どうやら、ファノンのような欧米から直接的に離脱するやり方ににためらいがあったようです。
第三に、社会主義の影響も色濃いです。
彼はソ連やフランスではなく、当時社会主義であったエジプトからその影響を受けているようです。
彼は、マルクス主義は現実の世界を変えるイデオロギーではないと批判するものの、その世界観はマルクス主義に近いものです。
彼は、人類の歴史を私有財産の発生(第一期)、機械の出現(第二期)で分類し、この過程で一部の人間が資源を独占することを産んだと指摘します。
このような発展段階説的な説明から、現代の問題を説明するやり口は、マルクス主義に近いものでしょう。
.
679
名前:普通のやる夫さん[sage] 投稿日:2024/08/31(Sat) 15:52:34 ID:7fafc258
中立を捨てて事態の渦中に踏み込んでしまったら全体を公平に観察するのは難しいから
我は観察者たらんとする人は傍観者にならざるをえず――両立は難しいと思う
やっぱりこの人は活動家タイプなんだろうなぁ
しかし武力革命の闘士→独裁的な権力者路線に進むには学者であり過ぎた感
680
名前:普通のやる夫さん[] 投稿日:2024/09/30(Mon) 22:51:37 ID:db34c147
今月は無理かしらね
681
名前:普通のやる夫さん[sage] 投稿日:2024/10/03(Thu) 21:59:46 ID:97c03fd9
社会構成主義と社会学は別物としか言えないね