やる夫で学ぶ「法学者の統治論」その2

レス数:129 サイズ:259.05 KiB 最終更新日:2025-07-12 12:51:41

40  名前:◆sSLW7aecKk[] 投稿日:2025/07/09(Wed) 17:57:53 ID:7a6afe46

>>38続き

②地域性に立脚した利害関係を宗教に持ち込んで利用してるようにしか見えんよ
これについてはある意味その通り、少々古い文献ですが酒井(2001)は宗教とナショナリズムの関係を以下のように述べます。
宗教とナショナリズムは原理的に別のように見えるが、実際には以下のように親和性も存在します。

         宗教の聖性                  ⇔            ナショナリズムの俗性
俗的な権威に聖性を付与して正当性を高める             再魔術化により共同体の精神的価値を高める

        宗教の普遍性                  ⇔            ナショナリズムの固有性
宗教的普遍性がカリスマ性を付与                     固有の信徒集団に対しての宗教的動員の可能性

       宗教の来世性                  ⇔           ナショナリズムの現世性
来世を保障するために現世での行動を働きかけ             来世までの行動への持続性付与


これをまとめると「西欧的理性を相対化する知」「グローバル化に対応した超国家性」「来世を保障するものとして現世への積極的な取り組み」になると言われます。
つまり、宗教とナショナリズムがある種の補完関係になるのは、当然といえましょう。
資本主義という西欧的理性を、イスラーム的ナショナリズムの時点で代替していると、イスラームの視点からは主張することもできましょう。

もっとも、この意見はイスラーム内部の物で、全世界の被抑圧者に響くものかといえば、答えはノーです。
彼らの世界観がイスラーム原理に立脚している以上は、おのずと限界があります。

酒井啓子. 2001. 「宗教とナショナリズム概論」酒井啓子編著『民族主義とイスラーム―宗教とナショナリズムの相克と調和―』研究双書514. 日本貿易振興会アジア経済研究

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