490  名前：無茶王 ◆T8n83RxOuU[] 投稿日：2020/05/14(Thu) 01:36:36 ID:c940b3f4
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準Sランクの力を手にし、平民たちは武力だけで言えば下手な異世界チーレムをも上回る化け物となった。

・・・しかしその暮らしが英雄譚の如く痛快で楽しいものかと言えば否。

人間社会は、あるいは狩猟脳は、絶対値ではなく隣のライバルとの相対値で幸福度を測る。

誰しも武力に恵まれたということは、誰も武力に恵まれてないのとほぼ同義だ。

準Sランクなど掃いて捨てるほど居るのに、誰が準Sランクに高い給料を出してくれる？誰が凄いと褒めてくれる？

ダンジョンすら冒険者が多すぎて不作続き。

適度なスリルを味わい、出世街道を駆け巡り、地位と富を思うがままに手に入れ、美男美女を侍らす。そんなチーレム冒険譚は味わえない。

そもそも武力においてすら無双とは言い難く、自分など「凡百の準Sランク」だと思い知らされる。

まして経済力は悲惨だ。世界を滅ぼすほどの武力があっても、狭く不潔なスラムの中で、明日喰う飯も定かでない。

そんな準Sランク貧困層も珍しくない。

飢えた家族を前にして、城を砕く聖剣など何の役に立つ？アーサー王のような無力な強者の悲嘆が平民を覆っていた。

専門学校で神の如き力を学ぶ間に芽生えた中二病は冷めるしかなかった。