【短編】XinphoniX XholiX【AA制作】
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名前:L_icE◆BeEFQCm8dk[] 投稿日:2020/08/10(Mon) 22:04:53 ID:???
此方が◆4DcjBzfbZ6氏から頂いた元プロットです_(:3」∠)_
①近未来。
男は、一人のお手伝いアンドロイドと暮らしていた。彼女は非常に従順で、淡々と男の命令に従っていた。
機械的に男の身の回りの世話をするアンドロイド。しかしそんな姿に男は苛立ち、平手を打った。
そして彼女は、殴られてさえただ頭を垂れて無表情で許しを請うていた。
一年前、最愛の妻を喪った男は、失意の中街を歩いていた。
ふと中古ショップのショーウインドウに目をやると、そのアンドロイドが売られているのを見つけたのだ。
亡き妻にそっくりだった。トップメーカーの最新機種にオプションをつけてもここまで似ることはない。
ひどく使い古された旧式ではあったが、衝動的に購入していた。
しかし一緒に暮らしているうち、同じ姿であるがゆえに違和感が増していった。
妻はこんな機械的な表情をしない。こんな喋り方をしない。違和感はどんどん積み重なり、
いつの間にか、男はアンドロイドの所作すべてに苛つくようになっていた。
②ある日、男がかねてより注文していた品が届いた。
押しも押されぬ一流アンドロイドメーカーに「オーダーメイドAI作成サービス」を発注していたのだ。
細かいオプションをつければ、故人の人格さえも再現可能というものだ。
映像記録さえあれば喋り方や表情の作り方まですべて再現できるという。
妻のありったけの映像や思い出の品をかき集め、大金を払い、
オンボロ中古屋とはまったく違う小奇麗なオフィスで、事細かに注文をつけてようやく完成したものだ。
③あとは、このポンコツにこのAIをぶち込めばいいだけ。
AIのデータをインストールすべく機能を停止させようとしたその時、アンドロイドが発したのは意外な言葉だった。
「おめでとうございます。ようやく奥様に会えますね」
ただ機械的に業務をこなしているだけかと思っていたアンドロイドは、すべてを理解していた。
奥様のことは写真や映像記録で知っていたと。スペック不足故に代わりになれず申し訳ないと。
最後に、もう一度、本当におめでとうございます、と言い、アンドロイドは自ら機能停止コードを入力した。
男は、ただ立ち尽くすばかりだった。
④家には、相変わらず淡々と機械的に家事をこなすアンドロイドの姿があった。
男は、アンドロイドに苛立ちを覚えることはなくなっていたが、あれ以降、どこか放心して過ごしていた。
アンドロイドは、初めて抱いた疑問を男に投げかけた。何故やめてしまったのですか、と。
男は答える。このAIをインストールしても、きっと違和感を抱いてしまうだろう。
それに、すでに死んだ者を蘇らすためにお前を殺すのは忍びなかったと。
アンドロイドは、男の厚意になんとか報いようと、スペックの限界を超えて表情を作った。
目元は無表情なままで、口角だけを釣り上げたひどく不細工な笑顔に男は思わず噴き出した。
お前はそのままでいい、と、ずっと忘れていた笑顔をアンドロイドに向けた。
END