10  名前：◆NBJATnhEhM[] 投稿日：2018/06/24(Sun) 01:34:57 ID:4dd373f0



　　「いいえ。 婆はそんな大層なものを、見たことはございませぬなあ。」

　　なぜ私は “塔” について教育係の者や母には聞かず、その女に聞くことにしたのか。

　　私はただ自分が塔の影について知っているということを、誰にも明かしてはいけない

　　ような気がしていたのだ。 けれどもその老婆にだけは尋ねてみても良いのではと思った。

　　しわだらけの顔や、手の動きから歩く動作まで何もかも緩慢な生が、私の心の内で

　　その人を特別な場所に位置づけていた。 だが返ってきた答えは期待外れなものだった。




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