【Ffh2風】やる夫は無茶振り王国の研究者のようです61【R-18】【技術開発】

レス数:1000 サイズ:1007.06 KiB 最終更新日:2020-09-25 02:14:44

389  名前:無茶王 ◆T8n83RxOuU[] 投稿日:2020/09/17(Thu) 00:26:54 ID:bd53bb00
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かくて殺島の人生は完全に詰んだ。

大人としての幸福は本当に何も残っていない。仕事も、妻も、娘も。

かろうじて残ったのは子供時代の思い出、かつての暴走族仲間と、忍者への逆恨みの復讐心、そして自己嫌悪だけ。

本人も「忍者が罪なき者を殺さないのは本当だった」と認めるほどに忍者に瑕疵が無いことはわかっていたが、

娘を危険な場所に放置した組長も妻も忍者に襲われて死んでしまった以上、

後はもう忍者と・・・家庭を守れなかった自分くらいしか恨む相手が居ないのだ。


そして暴走族仲間たちも、殺島と同じく大人としての人生になんとか順応していたが、結局耐えきれずに破綻していた。

やはり残るのは子供時代の思い出と、かつての暴走族仲間と、その黄金期を「半殺し」で潰した忍者への逆恨みと、落ちぶれた自分への自己嫌悪だけ。



ならばあとはせいぜい、子供時代を取り戻し、忍者へ逆恨みの復讐を成すしかあるまい?

・・・たとえその先には死しかないとしても、どうせ人生は詰んでいるのだから。せめてやりたいことやって楽しく死にたいと。

だから彼らは往時の如く、暴走を楽しみ、その悪事に引き寄せられた忍者への復讐を成そうとしたのだ。

・・・結局忍者には力及ばず敗れるも、その死は少なくとも子供時代の幸福な思い出の中の死であった。

詰んだ人生の中、大人として死にながら生きるよりは、忍者たちは慈悲深く安らかな死をもたらしたと言えるだろう。


それはそれとしてそんな現実逃避に巻き込まれて死んだ一般人からしてみれば「そのまま死んたまま生きててくれ」ではあるがな!



ただ、殺島自身にも自分たちの罪深さへの自覚はあった。「人様を踏みにじらないと幸福を感じられない負け犬」と客観視していた。

死んであの世に行く時に、娘の待つ天国へ行くこともできたにも関わらず、そして心底その選択肢に心惹かれたにも関わらず、

あえて大人として「悪いことしたら責任取らなきゃな」と地獄を選んだのだ。

恐らくは、娘に対して「悪いことをしたら責任を取るべし」という倫理を身をもって示す教育責任と、

地獄に堕ちる子供時代の仲間たちの面倒を最後まで面倒を見る、と言う二つの責任を果たすために。


一般人視点では本当糞迷惑で、そのまま死んでてくれとしか言いようがない悪人なのだが、

一方で「大人度」は高いと言わざるを得ない。

最後の最後で、己の幸福(それもあそこまで愛し希った娘との再会だ!)ではなく責任をこそ選んだのだから。