やる夫で学ぶ「法学者の統治論」

レス数:545 サイズ:850.61 KiB 最終更新日:2020-05-25 20:03:32

255  名前:◆0SmFBoNV9I[] 投稿日:2020/04/10(Fri) 02:06:28 ID:b2dd2941

ただし、中世スンナ派法学者の視点からは、選挙とは前任者による後継者指名も含まれます。
ジュワイニーよりも、20年近く前にいた法学者マーワルディー(シャーフィイー学派)がこの議論について定式化しています。

彼によれば、「選挙及び前任者の指名はいずれも有効である。ただし、前任者の指名は、選挙人の同意がなくても有効である。」
つまり、指名だけでもカリフになれるとしています。
ジュワイニーの議論もこうしたマーワルディーの考えを基本的に継承しています。
今回紹介したジュワイニーの言うところの「カリフ条件を満たし能力もある」ならば、永遠とこのように指名によって世襲されるでしょう。



ただ世襲の場合は、必ずしも「カリフ条件を満たさない」場合があると思われます。
ここで>>174の「能力だけもつ候補がいる場合の」議論が生きてきます。
その議論によれば、「カリフ条件は満たさないが能力がある人間いる場合、その人間が権力を独占し、他の追随がない場合
彼はカリフに推戴されなければならない」となります。つまり、能力さえあれば世襲カリフは論理的にありえるわけです。

また、世襲とはいえ、候補が複数いる場合も>>174の「完全な候補がいる場合の」議論が応用できます。
王と複数の王子を想定した場合、「選挙と服従の誓いが必要」とは、王による1人の王子の指名と家臣の服従の誓いと読みかえることができます。

つまり長々と説明しましたが、ジュワイニーの議論からは条件付きながら、世襲のカリフは正当化されるということになります。

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