やる夫で学ぶレンティア国家

レス数:631 サイズ:779.42 KiB 最終更新日:2018-04-28 03:38:19

76  名前:◆gKNcHiCsig[] 投稿日:2017/09/04(Mon) 18:06:39 ID:dc65ea91

>>64
これに関しては計量分析を行った[浜中2007]論文があります。
この論文では比率が20%程度までの国を対象にしていますが……
国民一人当たりの所得が8000ドル程度までの国はレンティア国家が少ないと考えられています。
また、8000ドルまではレンティア国家・非レンティア国家ともに民主体制への移行確立が高いと見なされています。

逆に1万ドル以上を越えている国には非レンティア国家が多いようです。
そのため、比率より経済成長が持続できているか、高い国民所得を持っているかが重要になります。

※ただし、この論文は推測の上に推測を兼ねているので要注意。



もう一点、軍に関しては確かにそうかもしれません。
兵士級は給料が豊富であれば満足するかもしれませんが、士官級以上の教育を受けた層は疑問に思うかもしれません。
そう考えるならば、レンティア国家は軍にとっての抑制効果にはなりにくいのかもしれません。

ちなみに、通常非民主的体制において、軍の脅威を減らす方法は3つあります[木之内 2016]。
1つは人事の操作で、左遷、解任、引退、国外追放、自身を支持する軍幹部の厚遇(ここにはレントの配分も含まれる)などがあります。
しかし、この方法は冷遇された軍幹部のクーデターを引き起こす可能性があります。

もう1つは、準軍事組織・民兵などをつくって軍に対抗させる方法。
しかし、これも軍全体の反発を買う可能性があります。

最後の1つは大衆ベースの政権党を創設することです。
通常軍による権力掌握が内戦を避けるような手段を取る傾向にあり、また民衆への攻撃は軍の反発・解体を招く可能性があります。
そのため、政権党が民衆を動員すれば、軍は民衆の反発を恐れて、政治への介入を抑える傾向になります。

※例えば1952年エジプト革命、1980年トルコクーデターを見れば、当時の政権が民衆の支持基盤を失っていることが分かります。
※また、軍が内戦や民衆への攻撃を避けた例としては、ソ連8月クーデターなどが考えられます。


引用文献
浜中新吾.2007.「中東諸国における非民主体制の持続要因 -レンティア国家論の計量分析-」 『国際政治』148: 43-58.
木之内秀彦. 2016. 「権威主義体制下の選挙・議会・政党:再考」 『鈴鹿国際大学紀要Campana』22: 29-30.


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