普通のやる夫板短編所part5
751
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:23:13 ID:f176fec2
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┃ ナブ・アヘ・エリバはニネヴェの街中を歩き廻って、
┃
┃ 最近に文字を覚えた人々をつかまえては、根気よくいちいち尋ねた。
┃
┃ 文字を知る以前に比べて、何か変ったようなところはないかと。
┃
┃ これによって文字の霊の人間に対する作用（はたらき）を明らかにしようというのである。
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i､ i､
| .l .__.,. ly .、ﾞl i､ ,,._,,,,,
， .__＿＿,|,__ﾆン'''ﾞ`| ｒﾞi､〉._ ﾉ＼
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ﾞl |rsii二， .| `-广 | | |＼
.| .,ン''ﾞ,,! l／ λλ＿,| | .|| ＼
| ._／" _ノ'ﾞl ／ (´∀｀) ﾚ| ＼|.| .| |
l.`_,._-''＾ ∧∧ U U￣ fﾞ'-," ＼|
′ ,ｺ ⊂(Дﾟ ) ﾚ ｀-., 〉
,x!" |l と´ | lﾞﾞ''i､, ｭ,ン´
._.ｯ!'~ -''| | ～ ∧∧| `| .＼
／ ／゛ l ./U U (.*ﾟー) ﾛ i＼ ＼
" _, ｒ'" lﾞ (i 〉つ l ＼ ｀ヽ,、 ／
´ _,__、 / ～| |i､ .| ＼ ＼,ノ
、 l″ ヽ f UU ヽ、 | ｒ'"| .|＼ i
ヽ | }.lﾞ ﾞl | ｆ十| | ￣i
| ﾄ' ∧＿∧ ヽ| Ｌソ | .l
| / ⊂（ ´・ω・） .'-、'″ | .|
ヽ-, ,! ヽ ⊂_) ＼ . |
| (⌒) ノ ＼ .lﾞ ..γﾆヽ
(__ﾉ ''-.″ .ヽ__ノ
ﾞ'- .、ノ-'.、
＿ ●::●> ヽ
|権|（人__） ノ
|利|と<V>rｍ＼＿＿＿
＼ ワゴンR ＼ 三ニ―
＼ . ＼ ニ三―
￣◎￣￣￣￣◎￣
752
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:23:18 ID:f176fec2
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┃ さて、こうして、おかしな統計が出来あがった。
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ﾘ ｀ ⌒´/￣/￣/
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ﾘ /￣/￣/
（| / / と）
と| / / /
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753
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:23:24 ID:f176fec2
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┃ それによれば、
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,. -──- ..,_
,. ‐'"´ ｀`ヽ ､
, '´ ＼
／ ヽ
./ 〉
{ く
ヽ、 ＿＿ヽ＿
L ＿,,.. --─┬ T丁 ﾊヽ￣￣
l ￣￣r￣ /./ (;:),ノ| /l,.ﾉl/ | |
/ l il /ノ ￣ ノ' / ヽ リ ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
/ ヽ! ／ ＿ , '´ ┃ 文字を覚えてから急に虱を捕るのが下手になった者、
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, ' |＼ l! ヽ､ ..ノ
／ | `" ｀ヽ
／ | ＜、
/ i ＼
../ |i ', `､
.! ,ｲ | ! ', ヽ
| / | / | | |､ ヽ ヽ
_,.‐' ￣￣｀ ﾞ` '‐.､
／ ＼
/ _ _ ﾞ!
i' ,r'´ ,,,,.. ｀＼ ﾞ!
┏━━━━━━━━━━━━━━━━─── i' i' ミ" ﾞ! ﾞ!
┃ 眼に埃が余計はいるようになった者、 | |≡ ● . | |
┗━━━━━━━━━━━━━━━━─── i,. i,℡ ,i' /
〉、 ＼ _ 山 __,／ ,r'、
__/／＼ ￣ ／＼ ヽ,
彡へu ﾞT' ‐.､_＿__ ,.‐ イ" ⊂､ 〈
ヽ、 /. ﾘﾘ
r"´＞､.＿___ ,.‐'＼
｀~´ ｀） ）
/／
-=iil|||||||||||||||||||||||||〈_ﾉ
754
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:23:29 ID:f176fec2
____
,.:;i;i;i:,_,,Ｘ⌒' :.,,
___,x竺x.,_Ｘj;i:,,Ｘ:, ,, , ＼
|i,;{ 円] 八州i;i;, Ｘi;i:i:,Ｘ＼.. ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
..__ Ｌ会=ｧz+㍍｣j(_ ;.i:., Ｘ; :,, i;i:. ┃ 今まで良く見えた空の鷲の姿が見えなくなった者、
....i〔:,__ ｰ‐‐==ｉ:州(___ｉ;.i:ｈiト㍍｣j;i:., Ｘ:i;i;〕.. ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
....｀¨⌒`ｰ '⌒）州i州i州 い::::::::〕iト㍍II〔_
._／州ii；i:ｉ ,;i;i ；_j:二::::::::::::抓(__〕 ｝
.｀¨さミ､州 ,:ｉ;i ' /んﾘ::::::::::｛辷I :.
.__う;I>iｉ; ｉ;i:,厶イ::::::::::::::::::::〔 '
(_,,.: 'イ;, ｉi; リ州j:::::::::::::::::::::::::::::)
・ ｀¨¨；州i;州;i 儿L:ﾉＶﾊ:（⌒¨´
, ’ 'i,州i;ｉ;.i: , -‐=＝=z:..,
.,:'ﾞ ﾞ':., ･ 'i,州i;i;, //,;#'ﾞ＾:i;':,州iﾆ-_
.,:'ﾞ ;. ' 'i,j;i;ｉ// , u i; j; ; . ﾆ
:,_ ,:; 州;i{ { u ; , i;.,j;i : i:, ﾆ
.:,,_;_;_;.:''. ; ｉ:, | |; ,;ﾞ#:, , ｉ:;i: :, ,j;i;..ﾆ
∧
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＼ ＼ ＼_ _／ ／ ／
＼〈二⌒＼} {／⌒二〉／
} r＼_〈Ｏ〉_／ヽ {
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┃ 空の色が以前ほど碧（あお）くなくなったという者 〉 :iー’'l ｌ`’‐:i/〈
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ｰヽ ﾏー‐ｲ /‐'
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,.:.:.:.:. ＼ゝ__ノ ＼o ｌ二ｌ o／ ゝ __ノ／:.:.: ＼
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┃ などが、圧倒的に多い。
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755
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:23:34 ID:f176fec2
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┃ 「文字ノ精ガ人間ノ眼ヲ喰ヒアラスコト、ナホ、蛆虫（うじむし）ガ胡桃（くるみ）ノ固キ殻ヲ穿（うが）チテ、
┃
┃ 中ノ実ヲ巧ミニ喰ヒツクスガ如シ」と、ナブ・アヘ・エリバは、新しい粘土の備忘録に記した。
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756
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:23:39 ID:f176fec2
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┃ ．．．．
┃ 文字を覚えて以来、咳が出始めたという者、くしゃみが出るようになって困るという者、
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┃ しゃっくりが度々出るようになった者、下痢するようになった者なども、かなりの数に上る。
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:::: :: ヽ, ....... ... .... . . .. .⌒ヽ
┌―――――‐‐:､ ヽ.:.:._:_:.:.:.:.___:::.:.:.:.:..:::.:.:ノ
| 手 掴 医 院 | ＼
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TTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTiヽ､
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757
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:23:44 ID:f176fec2
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┃ 「文字ノ精ハ人間ノ鼻・咽喉（のど）・腹等ヲモ犯スモノノ如シ」と、老博士はまた記した。
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758
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:23:49 ID:f176fec2
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┃ 文字を覚えてから、にわかに頭髪の薄くなった者もいる。
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┃ 脚の弱くなった者、手足の顫（ふる）えるようになった者、顎がはずれやすくなった者もいる。
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: 彡 ⌒ ミ :
:（ ﾞ´ω｀ﾞ）: : 彡 ⌒ ミ :
: 彡 ⌒ ミ : :（:::::::::ｿ:::っ: :（ ﾞ´ω｀ﾞ）:
:（ ﾞ´ω｀ﾞ）: :し─Ｊ ┃: :（:::::::::ｿ:::っ:
:（:::::::::ｿ:::っ: :し─Ｊ ┃: ..: 彡 ⌒ ミ :
:し─Ｊ ┃: :（ ﾞ´ω｀ﾞ）:
:（:::::::::ｿ:::っ:
:し─Ｊ ┃:
759
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:23:55 ID:f176fec2
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┃ しかし、ナブ・アヘ・エリバは最後にこう書かねばならなかった。
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＿/((┃))＿＿＿＿_＿i |
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760
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:24:00 ID:f176fec2
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┃ 「文字ノ害タル、人間ノ頭脳ヲ犯シ、精神ヲ麻痺セシムルニ至ツテ、スナハチ極マル。」
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| （__人__） |
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761
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:24:05 ID:f176fec2
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┃ 文字を覚える以前に比べて、職人は腕が鈍り、戦士は臆病になり、猟師は獅子を射損うことが多くなった。
┃
┃ これは統計の明らかに示す所である。
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| | | |_||Super Mario Galaxy
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| | ./
|＿＿＿|/Opoona
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／ ::＼:::／:: ＼ / /
／ <●>::::::<●> ＼ﾉ /
| （__人__） | .,/
＼ ｀ ⌒´ ／
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(＿＿＿） /
762
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:24:10 ID:f176fec2
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┃ 文字に親しむようになってから、女を抱いても一向楽しゅうなくなったという訴えもあった。
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. . ＼ ｀ ⌒´ ／
r､ r､／ ヘ
ヽヾ 三 |:l1 ヽ
＼>ヽ/ |｀ ｝ | |
ﾍ lノ `'ｿ | |
/´ / |. |
＼. ｨ | |
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763
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:24:15 ID:f176fec2
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┃ もっとも、こう言い出したのは、七十歳を越した老人であるから、これは文字のせいではないかも知れぬ。
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| （__人__） u. |
. . ＼ ｀ ⌒´ ／
r､ r､／ ヘ
ヽヾ 三 |:l1 ヽ
＼>ヽ/ |｀ ｝ | |
ﾍ lノ `'ｿ | |
/´ / |. |
＼. ｨ | |
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764
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:24:20 ID:f176fec2
┏━━━━━━━━━━━━━━───
┃ ナブ・アヘ・エリバはこう考えた。
┃
┃ エジプト人は、ある物の影を、その物の魂の一部と見做しているようだが、
┃
┃ 文字は、その影のようなものではないのか。
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| （__人__） |
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.＼ “ ／＿__| |
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765
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:24:25 ID:f176fec2
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┃ 獅子という字は、本物の獅子の影ではないのか。
┃
┃ それで、獅子という字を覚えた猟師は、本物の獅子の代りに獅子の影を狙い、
┃
┃ 女という字を覚えた男は、本物の女の代りに女の影を抱くようになるのではないか。
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／ ￣ ￣ ＼
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／ .<●>::::::<●> ＼
| （__人__） | 本物
＼ ｀ ⌒´ ／
/,,― -ー ､ , -‐ ､
（ , -‐ '" ）
`;ー" ` ー-ー -ー'
l l
／0￣＼
|:::::::::::::::::|
＼＿__／
＿＿_
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／ ⌒ ⌒ ＼
| ・ .. ・ | 影
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／＼＿＿＿＿／ヽ
／__/＿＿ ＿＿ヽ__＼
∠ !:::::::::::::::| |::::::::::::::!＿_ヽ
|＿７|＿ ＿＿＿＿ ＿_ F !｣
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_,|ー-┼┼-ー│_
.(＿|＿＿| |＿＿_|＿)
766
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:24:31 ID:f176fec2
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┃ 文字の無かった昔、ピル・ナピシュチムの洪水以前には、
┃
┃ 歓びも智慧もみんな直接に人間の中にはいってきた。
┃ ｳﾞｪｲﾙ
┃ 今は、文字の薄被をかぶった歓びの影と智慧の影としか、我々は知らない。
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''"'"~''' ﾞﾞﾞﾞ''''''''''‐-- ､ ,,,, ~ﾞ"'ｰ-::... |巫|il］il］|_三‐┬ li ,.､t''T
｀ﾞ''ｰ-、 ''"'"~''' ﾞ''､,, ｀ﾞ''ｰ-、|l::;...;;.;.;ii:illl":;;;
767
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:24:36 ID:f176fec2
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ 近頃人々は物憶えが悪くなった。これも文字の精の悪戯（いたずら）である。
┃
┃ 人々は、もはや、書きとめておかなければ、何一つ憶えることが出来ない。
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| ||℡ ∧｣| Ｖ :Ⅷ 7 ,/ ｌL ⊿|| |
.｣ || ℡ ||: Ｖ＿_＿_.Ⅷ＿＿＿＿＿.7＿_＿../ / || ⊿ || L
| ||三三|ﾆミ∧ ／￣Ｖ￣￣｀Ⅷ￣￣￣￣ 7 ./￣＼ / 仁|三三|| |
| ||三三| |ﾄ .∧〃 :Ｖ Ⅷ 7 / ヽ./ ｲ| |三三|| |
| ||三三| || ℡ || .ィ Ｖ＿_＿Ⅷ＿＿＿_.7＿＿./ ､ || ⊿ || |三三|| |
L..||＼三| || |ﾆﾐ∧〃 :Ｖ二二Ⅷ二二二7二二/ ヽ ,/仁| || |三／||.._|
| || ＼| ||三| |℡|| ／ | | | | ＼. |l⊿| |三|| |／ || |
| ||三三| ||三| |ﾍ|℡. 〃⌒ヽ | ﾚﾞ⌒ヽ| | 〃⌒ヽ ,.⊿|ﾍ| |三|| |三三|| |
| ||三三| ||＼| |ﾆ| |ll├―――┬┬―‐┬┬――‐┤l|:| |ﾆ| |／|| |三三|| |
|二＞.三| ||三| |ﾆ| |lｌ |三|三|三||....|三|三|....|三|三三| ||:| |ﾆ| |三|| |三.＜二|
|ニ|＞。 | ||三| |ﾍ| |ﾄ之IIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIツ|:| |Ｘ| |三|| | 。＜|ニ|
l了ﾄ｡. :| |L | |ﾆ| |ll├―――┤├―‐┤├――‐┤l|:| |ﾆ| | _|| | ｡:|ヾ.|
| ||三℡| ||＞| |ﾆ| |lｌ |三|三|三||....|三|三|....|三三|三| ||:| |ﾆ| |＜|| |⊿三|| |
| ||三三| ||℡| l'<| |ﾄ之IIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIツ|:| l>'| |⊿|| |三三|| |
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| ||三三| ||￣| l | ||lIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIll|:| l | |￣|| |三三|| |
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| ||＞ 了ｌ||＜| ｢ｮ| ||ｌ |三|三|三|l .〃⌒ヽ |三三|三| ||:| ｢ｮ| |＞||ｌ了 ＜|| |
| ||_,. ＜| ||三| l>'| l厠IIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIlミ|:| l'<| |三|| |＞ .,_|| |
｢ :||三三| || | |ﾆ| ｢| ｎ. l l l l :｢| |ﾆ| | || |三三|｢ :|
[...]|三三| ||／| |ﾆ| |:| |三三| L_l L_l |三三| |:| |ﾆ| |＼|| |三三|[...]
| || L.｣|三| |ﾆ|_|:|＿|三三|＿|__l L_l＿|三三|＿|:|_|ﾆ| |三|L.｣ || |
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768
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:24:41 ID:f176fec2
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┃ 着物を着るようになって、人間の皮膚が弱く醜くなった。
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／ | / ・ /ヽ
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ｌ⌒ヽ ＿ﾉ | |＼ |___| {}@{}@{}－| る| |
| r `■□ ）__) ＼ >ﾟ))))彡ー―'. |＿.|＿|
（＿ノ ￣ ／ ／ ＼`ー―’＿＿＿
（＿_^) | |￣￣￣￣￣￣￣￣￣
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769
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:24:46 ID:f176fec2
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┃ 乗物が発明されて、人間の脚が弱く醜くなった。
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( __つ.＼ ／ (＿／|
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__/ ハ |
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＼､__ノ (＿＿ﾉ
770
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:24:51 ID:f176fec2
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ 文字が普及して、人々の頭は、もはや、働かなくなったのである。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
_＿＿＿
. ／ ＼
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.／ （●） （● ） ＼
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| | | ＼ ｀,､､、 ／
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| | | / ／ /'ﾞ｀'''" ､ ヽ ＿
| | | ゝ､___ノ | ｌ | |
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771
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:24:56 ID:f176fec2
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ ナブ・アヘ・エリバは、ある書物狂の老人を知っている。
┃
┃ その老人は、博学なナブ・アヘ・エリバよりも更に博学である。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
/＼＿＿_／ヽ
／'''''' '''''':::::::＼
. |（●）, ､（●）､.:| ＋
| ,,ﾉ(､_, )ヽ､,, .::::|
. | ｀-=ﾆ=- ' .:::::::| +
＼ ｀ﾆﾆ´ .:::::／ +
,,.....イ.ヽヽ、ﾆ__ ーーノﾞ-､
: | '; ＼_____ ノ.| ヽ i
| ＼/ﾞ（__)＼,| i |
＞ ヽ. ハ | |｜
772
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:25:01 ID:f176fec2
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ 彼は、スメリヤ語やアラメヤ語ばかりでなく、
┃
┃ パピルスや羊皮紙に記されたエジプト文字まですらすらと読む。
┃
┃ およそ文字になった古代のことで、彼の知らぬことはない。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
/
_＿ ＿ / _＿| /
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＿/ / ／
＿/ ＿＿_／
/＼＿＿_／ヽ
(.｀ヽ(｀＞ 、 ／'''''' ''''''::::::＼
`'＜｀ゝr'ﾌ＼ ＋ |（●）, ､（●）､.:| ＋
⊂ｺ二Lﾌ^´ ノ, ／⌒) | ,,,ﾉ(､_, )ヽ､,, .::::|
⊂l二L7_ / -ゝ-')´ + | ｀-=ﾆ=- ' .:::::::| +
＼_ ､__,.ｲ＼ ＋ ＼ ｀ﾆﾆ´ .:::／ +
(T＿_ノ Tヽ , -r'⌒!￣ `":::7ヽ.｀- ､ ./|
ヽ￢. / ﾉ`ｰ-､ﾍ<ｰ1´| ヽ | :::::::::::::ﾄ、 ＼ ( ./ヽ
＼l__,.／ i l.ヽ! | .| ::::::::::::::l ヽ ｀７ｰ.､‐'´ |＼-､
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿__ ＿＿
│一│一│一│二│三│四│五│六│七│八│九│九│九│｜九｜
│萬│萬│萬│萬│萬│萬│萬│萬│萬│萬│萬│萬│萬│｜萬｜
773
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:25:06 ID:f176fec2
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ 彼はツクルチ・ニニブ一世王の治世第何年目の何月何日の天候まで知っている。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
_ /＼＿＿_／ヽ
| ! ／'''''' '''''':::::::::＼＋
｜ !. |（●）, ､（●）､.:::|
| ! ,.-, | ,,ﾉ(､_, ) ヽ､,, .::::| +
_,ﾉ ┴、/ ,/. | ｀-=ﾆ=- ' .:::::::|
r `二ヽ ） i... ＼. ｀ﾆﾆ´ .::::::／
| ー、〉 / _｀,,ー --´...／i＼,,,,_
| r_,j j__,,.. r''''"/::;| ＼`'／ ,'::;;;r;;;;;;;;;;;;:: r ‐-、
| ） ﾉ ::::::::;;;;;;;/::;;;;| ／＼ /::;;; l;;;;;;;;;;:: ::;;;;;;;:: ヽ
ﾉﾆ-､ ,/::;;|:::;;;;;;;;;＞::;;|／(::::ﾉ ＼/::;;;く;;;;;;;;;;;;:: i::;;;;;;;;;;;:: }
√..:::;;; ヽ､〉;:;;|::::;;;;;;;;{ ::;;;;;| "::く /:::;;;;/;;;;;;;;;;;;:: |::;;;;;;;;;:. ノ }
/..:::::;;;;;;;;;;;;;;;〉;;;;|::::;;;;;;;;;:{ ::;;;;| |:::::::| /:::;;;:/;;;;;;;;;;;;;:: |::;;;;;;;;;;;;;;;;:: }
774
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:25:12 ID:f176fec2
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ しかし、今日の天気は晴れか曇りか気がつかない。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
l ! ! l ! ! l ! l ! ! ! l l ! ! l ! ! l l ! ! l ! ! l l ! ! l ! ! l l ! !
l ! ! ! l l ! ll !! l ! ! l l l ! ! ! ! l !l l l l ! !! l ! ! ! l l ! ! l !
l l ! ! l ! ｌ┃ ┃ l〓 l ! ! l ! ! l l ! ! l ! ! l ! l l ! ! l l !
!l l l ll ╋━╋l ! ! !l ! ! l ! ! ! l l ! ll ! ! l l ! l l ! ! l ! ! l l ! ! l !
! ! l l ! l l ! ll !l┃ ! !━┳┓l !━━━━━━━━ !! ! l ! l l l ! ! l !
l ! ! ! l ! ! ｉ━┛l i ! l┃┛ ! l l ! ! l ! ! l ! ! l l ! ! l l ! ! l !
l..! ! l ! ! l l ! ! l ! !┛ l l ! ll ! ! ! ! l l ! ! l l ! ! l ! ! l l ! ! l !
!!l l l l ! !l ! ! l ! ! l l ! l ! ! l l ! !l l l l ! !! l ! !l l l l ! !
l.l ! l ! ! ! l ! ! l l ! ! l ! ! ! l ! l ! l l ! ! l ! ! l l !l l ! ! l ! ! l
l.l ! ! l ! ! l l ! ! l ! ! l l ! ! l ! ! l l ! ! l ! !l l ! l l ! ! l ! ! l
!!l l l l ! !l ! ! l ! ! l l ! l ! ! l l ! !l l l l ! !! l ! !l l l l ! !
l.l ! l ! ! ! l ! ! l l ! ! l ! ! ! l ! l ! l l ! ! l ! ! l l !l l ! ! l ! ! l
l.l ! ! l ! ! l l ! ! l ! ! l l ! ! l ! ! l l ! ! l ! !l l ! l l ! ! l ! ! l
!!l l l l ! !l ! ! l ! ! l l ! l ! ! l l ! !l l l l ! !! l ! !l l l l ! !
l ! l ! ! ! l !. | r_,j j__,,.. r''''"/::;| ＼`'／ ,'::;;;r;;;;;;;;;;;;:: r ‐-、.! l ! ! l
l ! ! l ! ! l l !.| ） ﾉ ::::::::;;;;;;;/::;;;;| ／＼ /::;;; l;;;;;;;;;;:: ::;;;;;;;:: ヽ. l ! ! l
!l l l l ! !l !.ﾉﾆ-､ ,/::;;|:::;;;;;;;;;＞::;;|／(::::ﾉ ＼/::;;;く;;;;;;;;;;;;:: i::;;;;;;;;;;;:: }.l l l ! !
l ! l ! ! ! √..:::;;; ヽ､〉;:;;|::::;;;;;;;;{ ::;;;;;| "::く /:::;;;;/;;;;;;;;;;;;:: |::;;;;;;;;;:. ノ } ! ! l
l ! ! l ! ./..:::::;;;;;;;;;;;;;;;〉;;;;|::::;;;;;;;;;:{ ::;;;;| |:::::::| /:::;;;:/;;;;;;;;;;;;;:: |::;;;;;;;;;;;;;;;;:: }. !
775
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:25:17 ID:f176fec2
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ 彼は、少女サビツがギルガメシュを慰めた言葉をも諳（そら）んじている。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
_r-,
/＼＿＿_／ヽ r-, { | ﾄ、
／'''''' '''''':::::::::＼ | | | | | |
|（●）, ､（●）､.:::| | | | ｉ ! |
| ,,ﾉ(､_, ) ヽ､,, .::::| } r´ ｿ ﾄ i
| ｀-=ﾆ=- ' .:::::::| / ´,. ´ﾉ
＼. ｀ﾆﾆ´ .::::::／y- 、 __ ,.__ ﾍ{ ´ ／
｀rー-- ´／￣:./ : : : : : : :/. : :ヽ ／ ﾊﾄ､ _./
__／/:::::Λ/ : : : /. : : : : : :/ : : : : :.｀=,.へ_ ／ : : : ゞﾆ二彡
,.-< : : : :}:::::ｙ' / : : :__{: : : : : : / : : : : :／.. : : : :７√ : : : : : : : : : :.／
r´ : : : : :「: :/:::::i / : : : :＞ : : : : ,' : : : : :i : : :i: : : ::i / : : : : : : : : : .／
} : :, : : : i :/:::::::i/ : : .／ : : : : : : ', : : : :i:: : : :i: : : : :', : : : : : : : : ／
ﾌ :.ｉ : : : :i/::::::::/ : .／ : : : : : : : : :.', : : i:::ﾍ : :i::.. : : ::. : : : : : : ／
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i : : :ｉ : : : :i:::::::,' :/ : : : : : : : : : : : : : : =- y-ｰ ´¨￣ ｀-ｰ‐'"
776
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:25:22 ID:f176fec2
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ しかし、息子をなくした隣人を何と言って慰めてよいか、知らない。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
_r-,
/＼＿＿_／ヽ r-, { | ﾄ、
／'''''' '''''':::::::::＼ | | | | | |
|（○）, ､（○）､.∧ | | | ｉ ! |
| ,,ﾉ(､_, ) ヽ､,, （__;） } r´ ｿ ﾄ i
| ｀-=ﾆ=- ' .:::::::| / ´,. ´ﾉ
＼. ｀ﾆﾆ´ .::::::／y- 、 __ ,.__ ﾍ{ ´ ／
｀rー-- ´／￣:./ : : : : : : :/. : :ヽ ／ ﾊﾄ､ _./
__／/:::::Λ/ : : : /. : : : : : :/ : : : : :.｀=,.へ_ ／ : : : ゞﾆ二彡
,.-< : : : :}:::::ｙ' / : : :__{: : : : : : / : : : : :／.. : : : :７√ : : : : : : : : : :.／
r´ : : : : :「: :/:::::i / : : : :＞ : : : : ,' : : : : :i : : :i: : : ::i / : : : : : : : : : .／
} : :, : : : i :/:::::::i/ : : .／ : : : : : : ', : : : :i:: : : :i: : : : :', : : : : : : : : ／
ﾌ :.ｉ : : : :i/::::::::/ : .／ : : : : : : : : :.', : : i:::ﾍ : :i::.. : : ::. : : : : : : ／
／ :ｉ : : : :i:::::::::/:.／ : : : : : : : : : : : : , : : : : : : : : : : :,-､ : : : ／
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777
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:25:27 ID:f176fec2
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ 彼は、アダッド・ニラリ王の后、サンムラマットがどんな衣装を好んだかも知っている。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
_＿__
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{__ ﾆ ＼/ ‐┴┐ / __；
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/ﾆﾆ ‐三 _ -‐=? __ ;‐─┘ ′ ,__}
,′ ﾆﾆ ／ | 8 , _｝
. {ﾆﾆ , -‐ﾆ |_8ノ ｝
/ | 丿 | { ｝
.. '/ ／ ｏ|__ {_ ｝
'/ _ r； ´ ｢￣ {__ ；
'………：「 |___ {___ ┃
. ┃ ｏ｢￣ { †
778
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:25:32 ID:f176fec2
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ しかし、彼自身が今どんな衣服を着ているか、まるで気がついていない。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
/＼＿＿_／ヽ
／'''''' '''''':::::::＼
|（●）, ､（●）､.:| ＋
| ,,ﾉ(､_, )ヽ､,, .::::|
| ｀-=ﾆ=- ' .:::::::| +
＼ ｀ﾆﾆ´ .:::::／
／`ｰ､ ハｰ;";::i:::ヾｲl! ,r'~`ヽ､
,.ィ" ri l i ﾄ､ 1:|｀丶:;;;:イ' ill!7､ ､ y; ヽ､＿`
,. -‐''" ､ くゝソノリ~i | - ､ , -‐'7ﾊ ヾニﾄ- ~` ー- ､_
, ィ ´ ,ゝ､＿ `r' l | ､レ // `テ三..ノく _ ` ヽ、
/ , -' ,､ `､_） l,i, i // （／ ...,,;;;;:` ､ ヽ
;' '" ノ ;;;;:::: i ! : // .....:::::;;イ､_､＿＼ _ _ノ
l ..,, __,ィ"-‐´￣`i::::: ﾞﾞﾞ＝ ...,,,,,. l | ,// - = ""::;; :/ ｀ '''' '"
ヾ :;;;,, ,i l,// ,,..," / _,,.....,_
,. -- .,_ ＼ :;,. ;' V ;! `; /;: ノ ,.ィ'"XXXXヽ
/XXX;iXXミ;:-,､ ヾ '" ''' /./! ヾ ／ ,. - '"XXXXXXXX;i!
,!XXXXi!XXXXX;`iｰ;,､ i 、. / :ﾞi ;: , | ,. r'"XXXXXXi!XXXXXX:l!
|XXXXX;|XXXXX;|::::::::|`ヽ、 ,! ::| ,.レ"::::|XXXXXXX|XXXXXXX;l!
!XXXXX;|XXXXX:|:::::::::i ` ;! ダ :i! ／ !:::::::::|XXXXXXX|!XXXXXXX|
XXXXXx|XXXXX;!::::::::::! `. /::: デ ::| '" l:::::::::::|XXXXXXX|XXXXXXX |
XXXXXx!XXXXxﾘ:::::::::::! |:::: ィ ::::| i:::::::::::ゞXXXXXツ1XXXXXXX|
XXXXX/ ＼XXソ::::::::::/ i!:: ::::ﾉ i!::::::::::::ゞXX:／ lXXXXXXX|
XXXX:/ `ヾ::;;;;;:ツ ヾ;:: ::ノ ヾ:;;:::::::ゝ'" ヾXXXXX |
XXX/ `ヽ 、 _ゝく _,,. -`''" i!XXXXX:|
779
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:25:37 ID:f176fec2
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ 何と彼は文字と書物とを愛したであろう！
┃
┃ 読み、諳んじ、愛撫するだけではあきたらず、それを愛するのあまりに、
┃
┃ 彼は、ギルガメシュ伝説の最古版の粘土板を噛み砕き、水に溶かして飲んでしまったことがある。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
/＼＿＿_／ヽ
／ :::::::＼
.| .::::|
.| ／ ＼ .;:::| ♪
.| ー, ー ::::|
＼ ,,ﾉ(､_, )ヽ､,,..:::／
／｀｀ｰ;ﾆ=-'"一´＼
/ || ヽ
| || |
| |￣|i￣| |
| |~;~;~;~| |
|:::::::::::|
￣￣
_ヽ iｆ r ｡ ii、
/!//⌒ヾy f´⌒
o 。 |! iη｀ ﾟ
n ! . i| ﾟ +
j |! i n t +
ﾟ η! i| ＋
｡,j i i!、o
/＼_|l! |_／ヽ
／U ,oj､ l!､ .:::＼ +
. |J イ-=_ii=-ヽ .::::::| +
j (´ ｀) U .:::| ＋
. U | （●） ｀ ´ （●）´.:::| ＋
＼,,,,,, U ,,,,,, ::::／
,,.....イ.ヽヽ、ﾆ__ ーーノﾞ-､.
:;;;;;;;;| '; ＼_____ ノ.|::ヽ i
;;;;;;;;;;::| ＼/ﾞ（__)＼,| ::::i:::|
780
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:25:42 ID:f176fec2
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ 文字の精は彼の眼を容赦なく喰い荒らし、彼は、ひどい近眼である。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
/＼＿＿_／ヽ
／'''''' '''''':::::::＼
. | ３ , ､ ３ ､.:| ？
| ,,ﾉ(､_, )ヽ､,, .::::| ))
. | ｀-=ﾆ=- ' .:::::::| +
(( ＼ ｀ﾆﾆ´ .:::::／ +
,,.....イ.ヽヽ、ﾆ__ ーーノﾞ-､.
: | '; ＼_____ ノ.| ヽ i
| ＼/ﾞ（__)＼,| i |
＞ ヽ. ハ | |｜
781
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:25:48 ID:f176fec2
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ あまり眼を近づけて書物ばかり読んでいるので、
┃
┃ 彼の鷲形の鼻の先は、粘土板と擦れ合って固いたこが出来ている。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
/＼＿＿_／ヽ +
＋ ／ '''''' ''''''::::＼ ＋
. |￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|
.| |
,. -‐ '| |
/ :::::::::::| |＿_
/ :::::::::::::|. ｒﾆ-─｀､
. / : :::::::::::::| ｀┬─‐ .j
〈:::::::::,-─┴-､ |二ﾆ ｲ
. | ::/ .-─┬⊃ |`iー"|
.ﾚ ﾍ. .ﾆﾆ|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿|ｒー''"|
〈 :::::＼＿ﾉ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: |::::::: ／::::::::::::|
782
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:25:53 ID:f176fec2
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ 文字の精は、また、彼の背骨をも蝕み、彼は、臍に顎のくっつきそうな傴僂（せむし）である。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
+
＋ ./＼＿＿_／ヽ
.／'''''' '''''':::::::＼ +
i＜´. |（●）, ､（●）､.:| ＋
ヽ.._ | ,,ﾉ(､_, )ヽ､,, .:::|
∠｀ | ｀-=ﾆ=- ' .:::::::|.-＞
/＿ / ＼ ｀ﾆﾆ´ .:::／
l´__,/l＼､_￣０¨0)ﾞ@Yﾍ, -┤
. l'___|⌒ヾ''ｰ＝=､ｰr='ｲ ｉ二|
/ .｣ i /./7r‐く lー!
. ｆ. ヽ‐ｉ人.∠'＜ ＿i. l,.-ゝ.
ﾄiﾍﾍ｢ﾄ〈 ｀X ﾄﾚi7__|
〉ﾄ:ﾄﾊj｀! i. / ﾄｰ┤lﾙj,ﾘ
/‐+----+‐l iｰ--i---ヾ'〃
. ｌ＿i＿＿__i__| |＿__i,＿＿i_|
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ しかし、彼は、おそらく自分が傴僂であることを知らないであろう。
┃
┃ 傴僂という字なら、彼は、五つの異った国の字で書くことが出来るのだが。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
783
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:25:58 ID:f176fec2
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ ナブ・アヘ・エリバ博士は、この男を、文字の精霊の犠牲者の第一に数えた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
＿＿
／::￣￣´ ｀ヽ
／:::: ＼
／:::: （●）, ､（●）＼
＿_＿＿_,/:::: ,,ﾉ(､_, )ヽ､,, ﾞl
／￣￣￣￣￣￣￣´ ::ｌ::: ｀-=ﾆ=- ' lﾞ￣￣￣￣￣ﾞヽ
/:::: ::l:::: ｀ﾆﾆ´ l:::: ｌ
l:::: ::::ヽ、＿ ＿＿＿_,ノ:::: /
ヽ:＿＿＿＿＿＿ ::::: ｀::.. ::::::: ,／
｀￣￣￣￣｀ｌ:::::: ／￣￣￣￣￣´
|::::: /
|::: /
|:: /
|: ,ノ
|,／:::: ／
/::: : ヽ、 ／
l::: ヽ、イ
l::: ヽ
ヽ＿＿:::::::::: ＼
ノ ｀ヽ、:::: /
／ :::::::/ >:::: /
／ :::::::／ /´::: /
／ :::::::／ ,/::::: /
/ :::::::／ |::::: ﾉ
| :::／´ ,l:: ｿ
| ::/ i:: ,／
ﾞしﾞ´ Lノ
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ ただ、こうした外観の惨めさにもかかわらず、この老人は、
┃
┃ 実に――全く羨ましいほど――いつも幸福そうに見える。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
784
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:26:03 ID:f176fec2
┏━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ これが不審といえば、不審だったが、
┃
┃ ナブ・アヘ・エリバは、それも文字の霊の媚薬のごとき奸猾（かんかつ）な魔力のせいと見做した。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
／￣＼
| |
＼＿／
＿_|＿_
／ ＼
／ :::＼::::: ／＼
／ <●>:::::::<●ヽ
| （__人_,） |
＼＿ ｀⌒´ ／
/,.-― -―-､ , - ‐､
（ , -―' ）
`ｧー-' `ー-―-r'
| |
| |
785
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:26:08 ID:f176fec2
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ たまたまアシュル・バニ・アパル大王が病に罹（かか）られた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
,. -‐- .,_ ,.,__
, r' , , , , ｀ヽ､
,r ´ ﾘ"ﾐ ' ｀ｰ､ヽ､｀ｰ､
,' , , ´ﾉ )人｀､ ,､_ ヽ}､｀､ ヽ,
/ ﾘ {（､し' ｀｀'ｰ '´ ｀'ﾊ},）
,' i ﾉノ })ヽ） u ,ヽ ﾍ
{ { {' ヽ ,r'´≧≡=;;=´ ii/≦｀,
{ ｀ '} ）'｀' ´ r´, 示｀,｀ ﾊ,云｀{
', i ､し{､ゝ " ﾍ゛ .}
ﾊr'ﾆ‐'｀ ﾍ ι 〃 ） |
!､ {ヽ ﾊ " -=､～ |
ヽ ｀! ､ _､,._ |
｀ﾄｰﾍ |, ､ - ' ´＿ ,｀/
} ｀､ ' ´ .{
| ｀ヽ､ _ - ﾘ
| ､ ｀ ｰ ― ￣ ／ , ,ｒ,､＾
| ﾍ " "ﾊ,ｒ‐- ､ ,. ｒ ＾ ' ､ ｒ ,´ｒ´,.､ ヽ
,.| ﾊ / ﾊ/ ｀ｰ' } ,ｒ ´ｒ ´ ﾊ
＿,／ ' ﾍ / ／ / ｒ'´ / ヽ
,. - ‐ ´ ｀ / / / ﾍ ｀{
,.r' } / / / ｀ｰヽ,
,. - ､ !､ {,. / ／ ／ }
786
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:26:13 ID:f176fec2
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ 侍医のアラッド・ナナは、この病軽からずと見て、大王のご衣裳を借り、
┃
┃ 自らこれをまとうて、アッシリヤ王に扮した。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
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／ ｌ|
／ __ ｌ|
/ _ｌ_|ｌ|.
/ vﾊ ヽ＼
rくｿ ﾋﾉ 〇 l
r=ﾍ/ r‐≧z _-､ l ,z〉
, - ､ ＼{| l ＼＿・yY・_|
{ ） .l]| ￣｀ヽ ｀ |´ｲ
,ゝ‐､ﾉ l]! ,、￣「´|
弋__ノ 仏 |`〒ニﾃ
|ﾆﾊ. ヽ ヒ ﾉ r'⌒ヽ-､
_, r=＜ く ｀ ￣￣〔.ｭ_､、 r' j
／´ : .ｰ- - :., ,: '´ ｀ヽ ゝ、 .7 i′
/ .: :. ..｀. . . :V ､ヘ ｰ^ｰ ′
/ ;. . :. . : .:.v' ﾊ ヽ
,ﾉ:. . . .:!:. .; .:V:. ヽハ
´ : . ..:.:j ､:.. . . . .,: ' . .:.:.:.;､ :.、 .ﾍ
/ . .:;ｲ:., ｀ ., :.., ' :.,.:.. ..:.::,:´.::V:.＼､,ゝ､
. / . ..:.:;/｛ : . ,: ' ´ .; . :. ｀'.,:.::/.:..:.:.:ヽ｀://二.ヽ
' . ;.:.. . ;／ ゝ . .:' . :. . ..:.:/.: . :..:.:.:! ゝr'ニ, j
/ .:｀.Y´ ,. -‐=＝＝＝=-_:'_ :..;. . ..:.:/:.:. ,.: ´:j : .: :.::!´
｛ . :.::、 k{__ ｀ヾi;.:｀丶;ハ:.:;.: . ;! :! ;. .:!
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＼ :ゝ.--‐ ´,ノ＿ _ -_７. . .;..（⌒)-､ ..´
＼ . ..:く＿,￣ _,／..:,: ' .,ﾉ )
｀ト-- --─く, , - ､.´ （ ﾉ-'
{:. . . : ..（ ｀ヽ ｀ｰ'..:!
!:. . . , ' ）...０: :i
r'⌒ヽ-､. :.（ ﾉ. .. .:.:!
r' j :', ノ ... .:..:!
. 7 i′. . ｀‐--‐'´ .. :..:!
ｰ^ｰ ′ . . .:i ':. . . : ..:!
!: .. . ..:.! ';. . . . : .:|
!:. . . . .:.i :,:. . : .:.;!
､:..,. . :.:! !;. . :.;!
v :、.｀':,:. :! {:';. . :.{
787
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:26:19 ID:f176fec2
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ これによって、死神エレシュキガルの眼を欺き、
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
ﾄ､＿＿ /▼ヽ ＿＿,イ
＼＼::::＼＿_/_ l _ヽ_＿／::::／／
! !:::::::::::::::::::} ! {:::::::::::::::::::! !
／／::::／￣ｷﾉ | ゞ'￣＼::::＼＼
. !＜￣￣ ﾉ i ヽ ￣￣＞!
i｀､ !! ／i
i＼ヽx仝x／／i
| ｀‐---‐´ .|
〈 ・ /:::::ヽ 〉
i （:::） ＼::::::＼ i
/ヽ､ ￣￣ i
／::::::::::::7 ・ ヽ＿
／ ィ::::::! !::} （:::::） {＼ ＼
. ／ ﾘ:／ ￣ У＿ﾍ r‐､_＼二 〉
. ／ ∨::::::::廴 ＼ /
.. ／::::::） ／~{ ￣￣Ⅳ （::ヘ /!
／￣￣ ／ i::ﾘ ／:::／ ￣! }
／./￣￣｀r､
／」 ○ .|」｀ヽ,
, / .| ＿＿＿__ ヽ
. ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━─── ./,-─ ､|／_,-──, l｀ir､|
. ┃ 病を大王からおのれの身に転じようというのである。 .', f´¨．}.| {__･ .ノ |_|||｀ヽ､
. ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━─── .,ｲ｀‐＜.|__,-'￣￣￣ .||_／
__ ｀i ＿_|＿＿_ | |
| ﾍ | | rﾆﾆイ｀i | .ﾉ/
',ﾍﾍ ', ﾍﾍ|￣ | ﾉﾉ ／/
',ﾍﾍ‐‐､ ＼ヽﾆﾆﾆ'＿＿/ |｀|
／:.´‐‐｀､ｧ iヽ'二──'´ .ﾝ
{:.:.:.:.:.:￣ヾ､ | | ＞─､＿
|:.:.:.:.:.:.'＾r-'＿__／ﾍ ／日／日／｀ヽ-､_
|:.:.:.:.:.:.:.:.|ﾍ', 日ﾍ日ﾍ＿＿＿_／日／日／ ／／ .＞x
/:.:.:.:.:.:.:.:ﾉ､ﾍ', 日ﾍ旦旦旦旦旦 ／日／日// ／ >､
/:.:.:.:.:.:.:.:.:|:|_|ﾍﾍ.日ゝ旦旦旦旦旦旦／日//:.:.:｀ヽ､_ ／ ﾍ
/:.::.:.:.:.:.:.:../､:.:', ﾍﾍ 旦旦旦旦旦旦旦旦 //:.:.ﾍ:.:.:.:.:.:.:｀ヽ､_／ ﾍ
/:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:|:.:.:', ﾍ',旦旦旦旦旦旦旦旦//:.:.:.:.:人:.:.:.:.:.:.:.:.:＼／
788
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:26:25 ID:f176fec2
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ この古来の医家の常法に対して、青年の一部には、不信の眼を向ける者がある。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
／￣￣＼
／ _ノ ＼
| （ ●）（●）
＿＿＿ ＿＿＿_ | （__人__）
／ ＼ ／ ＼ | ｀ ⌒´ﾉ
／ _ノ '' 'ー ＼ ／ _,ﾉ ー ＼ | }
／ （●） （●） ＼ ／ （●） （●） ヽ ヽ }
| （__人__） | .| ' | .ヽ ノ
＼ ｀ ⌒´ ／ ＼ - ― ／ .> <
／ ＼ .／ ＼ | |
789
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:26:30 ID:f176fec2
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ これは明らかに不合理だ、エレシュキガル神ともあろうものが、
┃
┃ あんな子供だましの計に欺かれるはずがあるか、と、彼等は言う。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
＿＿＿_
／ ＼
／ -‐´ ｀ー＼
／ （●） （●）＼
| （__人__） |
＼ ｀ ⌒´ ／
> ー‐ < ＿＿＿＿
. / ／￣彡ﾐヽ、 ／ ＼
/ ヽ / / ヽ ヽ ＿ﾉ ー ＼ ／￣￣＼
ヽ. Ｙ / | | （ ●） （ ●） ＼ ／ ヽ､_ ＼
ヽ ノ ヽ ノ | ' | .（―）（― ） |
＼ ￣` ／ . （__人__） |
/ ヽ .（｀⌒ ´ |
/ ....ｌ^l^lｎ |
ヽ L ﾉ
ゝ ﾉ ノ
／ / ヽ
／ / |
790
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:26:35 ID:f176fec2
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ 碩学（せきがく）ナブ・アヘ・エリバはこれを聞いていやな顔をした。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
／￣＼
| |
＼＿／
|
／ ￣ ￣ ＼
／ ::＼:::／:: ＼
.／ ‐=・=‐:::‐=・=‐ ヽ
| （__人__） |
＼ ｀ ⌒´ ／
/,,― -ー ､ , -‐ ､
（ , -‐ '" ）
`;ー" ` ー-ー -ー'
l l
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ 青年等のごとく、何事にも辻褄を合わせたがることの中には、何かしらおかしな所がある。
┃
┃ 全身垢まみれの男が、一ヶ所だけ、例えば足の爪先だけ、無闇に美しく飾っているような、
┃
┃ そういうおかしな所が。
┗━━━━━━━━━━───
791
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:26:40 ID:f176fec2
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ 彼等は、神秘の雲の中における人間の地位をわきまえぬのじゃ。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
.／￣＼
| |
.＼＿／
.|
.／ ￣ ￣ ＼
..／ ::＼:::／:: ＼.
／ < 一>三<ー > .＼
| '" （__人__）"' |
＼ ` ⌒ ´ ／
/,,― -ー ､ , -‐ ､
（ , -‐ '" ）
`;ー" ` ー-ー -ー'
l l
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ 老博士は浅薄な合理主義を一種の病と考えた。
┃
┃ そして、その病をはやらせたものは、疑いもなく、文字の精霊である。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
792
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:26:46 ID:f176fec2
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ ある日若い歴史家（あるいは宮廷の記録係）のイシュデイ・ナブが訪ねてきて老博士に言った。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
／￣￣＼
／ ｀ヽ ＼
┏━━━━━━━━━━─── ...（⌒）（⌒ ) |
┃ 歴史とは何ぞや？ と。 | | |
┗━━━━━━━━━━─── .l __｀___ |
{ `ー'´ ｌ
{ ./
ヽ ノ
ﾉ ヽ
/ |
793
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:26:51 ID:f176fec2
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ 老博士が呆れた顔をしているのを見て、若い歴史家は説明を加えた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
／￣＼ ／￣￣＼
| | ／ へ ＼
＼＿／ （●）（ー ） |
＿|＿ │ │ ,| |
. ／´￣ ￣｀＼ │＿｀＿, ハ |
.／ ::::＼:::::::::／::::: ヽ | し' |､
/ < ・ > :::::::: < ・ > ヽ | / ＼
./ l ヽ / > 冫
.| （_＿人＿） .| / ´ ／
..ヽ | -┬-| / | ／
ヽ､ .｀ ⌒ ´ ／ | |
／:::::::::|::＼ﾞ_>介 √!;:::::::＼
. /:::::::::::::::＼:::ヽ };;{ |::/::::::::::::::ヽ
/:::::::::::::::::::::::ヽ::ヾ::}〃:::::::::::i:::::::i
794
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:26:56 ID:f176fec2
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ 先頃のバビロン王シャマシュ・シュム・ウキンの最期について色々な説がある。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
／￣￣＼
／ ｀ヽ ＼
（●）（● ) |
| | |
l __｀___ |
{ `ー'´ ｌ
{ ./
ヽ ノ
ﾉ ヽ
/ |
┏━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ 自ら火に投じたことだけは確かだが、
┗━━━━━━━━━━━━━━━━───
795
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:27:01 ID:f176fec2
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ 最後のひと月ほどの間、絶望の余り、言語に絶した淫蕩（いんとう）の生活を送ったというものもあれば、
┃
┃ 毎日ひたすら潔斎（けっさい）してシャマシュ神に祈り続けたというものもある。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
／￣￣＼
「 へ ＼
（● ）（● ） |
| | |
| ___｀___ |
| `ー '´ |
ヽ /
ヽ /
/ ＼
⊂ ヽ∩ / ＼
'､＿ ＼| |
＼ ＼ ／ ／
796
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:27:06 ID:f176fec2
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ 第一の妃ただ一人と共に火に入ったという説もあれば、
┃
┃ 数百の婢妾（ひしょう）を薪の火に投じてから自分も火に入ったという説もある。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
／￣￣＼
ノ へ ＼
（● ）（● ） |
| | .u |
| ___｀___ |
| `ー '´ |
ヽ /
> ＜＿ r ､
,''''つ／）/ i ヽ ! !(,ヽ
/ /／／ノ´) / ）ﾄ .| | | | i
〈 Y ∠／／,' ) 〈 〈 .| | | |/ ./
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ 何しろ文字通り煙になったこととて、どれが正しいのか一向見当がつかない。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
797
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:27:11 ID:f176fec2
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ 近々、大王はそれらの中の一つを選んで、自分にそれを記録するよう命じたもうであろう。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
／￣￣￣＼
／ ＼
/ ヽ
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| 〃/
＼、__ （
_）_ =＝＝＼
／ ＼
/ ヽ
| , i
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/ ﾉ | |
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（ヽ､__,/＿＿__ _＿,У
ヽ_ｨ __ __￣￣_￣_,|
￤ ￤ ￤ j l |
798
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:27:17 ID:f176fec2
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ ． ．
┃ これはほんの一例だが、歴史とはこれでいいのであろうか。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
／￣￣￣＼
／ ＼
/ﾉ ヽ､_ ヽ
（ ●）（ ●） |
| | |
|. ___｀____ l
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＼__ （
_）_ =＝＝＼
／ ＼
/ ヽ
| , i
| | l.|
| l | |
| |. |. l
l | |.│
/ ﾉ | |
/ / l /
（ヽ､__,/＿＿__ _＿,У
ヽ_ｨ __ __￣￣_￣_,|
￤ ￤ ￤ j l |
799
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:27:22 ID:f176fec2
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ 賢明な老博士が賢明な沈黙を守っているのを見て、若い歴史家は、次のような形に問を変えた。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
／￣＼ ／￣￣＼
| | ／ へ ＼
＼＿／ （●）（ー ） |
＿|＿ │ │ ,| |
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.／ ､ , ヽ | し' |､
/ ::::＼:::::::::／::::: ヽ | / ＼
. /. u. <● >:::::::: <● > l ヽ / > 冫
. | | / ´ ／
. .ヽ （＿_人＿） / | ／
ヽ､ .｀ ー ' ／ | |
／:::::::::|::＼ﾞ_>介 √!;:::::::＼
. /:::::::::::::::＼:::ヽ };;{ |::/::::::::::::::ヽ
/:::::::::::::::::::::::ヽ::ヾ::}〃:::::::::::i:::::::i
800
名前：◆XMkCPdID3g[sage] 投稿日：2016/10/01(Sat) 20:27:27 ID:f176fec2
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
┃ 歴史とは、昔、在った事柄をいうのであろうか？ それとも、粘土板の文字をいうのであろうか？
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━───
／￣￣＼
「 ヽ､,＿ ＼
（●)（●.） |
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ｌ __｀___ │
ｌ {
､______ .ィ-ｰﾄ、
V／_:_ｭ:-:-: ヽ
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} r'、 ﾍ､ / : : : : : : : : : : : : : : : : : : i
i/ ム､} .{ i : : : : : : : : : V : : : : : : : : |
{ い､{ Ｙ : : : : : .＼ : V: : : : : : : : |
＼ ヽ {|V : : : : : : ＼V: : : : : : : :|
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